「そうだったのか、ヒラリー・クリントン!」と思わず膝を打つ日が来るかも!?

ビジネス

2016/4/25


『ヒラリー・クリントンの言葉』(ライザ・ロガック:編、池上 彰:監訳、高橋璃子:訳/かんき出版)

 アメリカでは、来る2016年秋の大統領選の話題で盛り上がっている。「イスラム教徒のアメリカへの入国を拒否する」「不法移民流入を防ぐため、メキシコとアメリカとの国境に壁を築く」などと主張している共和党大統領候補、ドナルド・トランプ氏の過激な発言と、日本では意外に思われている代議員獲得戦での彼の善戦は、連日世間を騒がせている。

 おおまかな日程では、2大政党の共和党・民主党とも、各党大会で1人の大統領候補に絞り込むのが2016年7月、一般投票による大統領選挙が11月、選挙人による投票が12月、次期大統領正式決定が2017年1月、同月下旬に大統領宣誓…である。

 ヒラリー・クリントン氏は、いわずと知れた、アメリカ民主党次期大統領候補。女性初の大統領になるか?…大注目の人物である。2016年4月現在、民主党の代議員獲得戦で、もう一人 の候補、バーニー・サンダース氏より優位に立っている。元大統領ビル・クリントン氏の妻(元ファーストレディー)、元国務長官、弁護士…日本では、バリバリのキャリアウーマンのイメージばかりが先行している。だが彼女の生い立ちや人生観、どんな考えを持っているのかは、意外に知られていない。

ヒラリー・クリントンの言葉』(ライザ・ロガック:編、池上 彰:監訳、高橋璃子:訳/かんき出版)では、ヒラリーがさまざまな場所で発言したことや著作の内容をピックアップ。政治や経済、外交から価値観、生き方まで、16の項目に分けて紹介し、池上彰氏が分かりやすく徹底解説している。アメリカではよく知られていることも、日本では知られていないこともある。

 たとえば、「生き方」の章「人生について」で

配られたカードではありません。カードは自分で選びます。そのカードでベストをつくします。そして次の手へと進みます。「ニューヨーク・タイムズ」紙(2012年11月10日)

 とある。

 カードを選び、選んだからにはその道を突き進む…彼女の精神構造の一端が、言葉から読み取れる。

 ヒラリーは1947年、キリスト教メソジスト派の信仰篤い家庭に生まれ、アメリカ東部の名門女子大ウェルズリーを卒業し、卒業生総代として初のスピーチをしている。当時は女性がスピーチすること自体考えられなかった時代。「わたしたちがやらなければならないのは、不可能に見えることを可能に変えること」(2003年刊・自伝『リビング・ヒストリー』)と述べて大きな反響を呼び、当時人気のグラフ雑誌『ライフ』の特集記事に掲載されるほどだったという。彼女はアメリカでは「女性の権利」などという意識もない時代から、わたしたちは未来を変えることもできる、と主張してきた先駆者として知られているのだ。

 一方で、現代の女性は「ダブルバインドの状況」におかれているともヒラリーは指摘している。矛盾する2つの考えに拘束されて身動きが取れなくなっているのではとみているのだ。「賢くあれ、自己主張しろ」と要求され激励される反面、「衝突するな、自己主張の強い女は嫌われるぞ」とも要求されているという。日本社会だけでなくアメリカ社会でも根強い考えがあるとみているのは驚きだが、今後アメリカ大統領になるとしたら、彼女はどう主張を貫くのだろうか? 彼女の活躍を認めるのか認めないかもこれからの社会のリトマス試験紙にもなるのかもしれない。

 ありとあらゆる問題がアメリカには山積している。次期大統領候補であるヒラリー・クリントン氏の生きざまや言動を知ることで、アメリカのこれからのかじ取りを予測するのも面白いかもしれない。池上彰氏の解説も読みごたえあり。「そうだったのか、ヒラリー・クリントン!」と思わず膝を打つ日が来るかもしれない。

文=塩谷郁子