ヨシタケシンスケの最新絵本『このあと どうしちゃおう』は「死」がテーマ――頑固な大人の涙を誘う

文芸・カルチャー

2016/5/6

大々的に“泣ける”と銘打たれているものは苦手だ。世の中の常識や“普通”を押しつけられると、けっと毒づいてしまう。そんな頑固でひねくれ者の大人にこそ読んでほしい絵本『このあと どうしちゃおう』(ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社)。特別な訓示があるわけじゃないのに、なんだろう、このこみあげてくるものは。大切な人に贈って感想を聞きたくなる、そしてお互いのことを話して「うん、うん、そうだよね」とうなずきあいたくなる、そんな不思議な絵本なのだ。

物語の筋はシンプルだ。死んだおじいちゃんの部屋から“ボク”が見つけた「このあとどうしちゃおう」ノート。そこにはおじいちゃんが想像した“このあと”――つまり死んだあとのことがたくさん描かれていた。なんだか楽しそうな死後の世界にボクはくすりと笑いながら、おじいちゃんは何を考えていたのだろうと思いを馳せる。そんなボクにお父さんは言う。「ほんとのところはおじいちゃんにしかわかんないよねェ」。そうなのだ。誰かをわかりたいとどれだけ願ったところで、本当のところは本人にしかわからない。亡くなった相手には聞くこともできない。だからみんな思うのだ。ああ、もっと話をしておけばよかった、くだらないことでもいいからもっとたくさん、あの人の欠片をもらっていればよかった、と。

りんごかもしれない』(ブロンズ新社)で話題をさらって以降、何冊も絵本を出版してきたヨシタケシンスケさんが、ずっと描きたかったのが本書だ。きっかけは、ご両親との別離。死んだあとに何を供えてほしいか、何に生まれ変わりたいか、そんな他愛もないことをもっと話しておけばよかったと感じたという。あのときの自分に、この絵本が存在していたらもう少し救われたかもしれないと、そんな思いで綴られている本書は、随所にヨシタケさんらしいユーモアが満載だ。とくに「いじわるなアイツはきっとこんなじごくにいく」のページに描かれる地獄の風景には、あーわかるわかるとつい吹き出してしまう。いわく、地獄の制服はいつも濡れていて冷たいし、ちくちくしている。何をしても怒られるし、いつもぎゅうぎゅう詰めだし、とにかくくさい。それが毎日続くなんて、確かに地獄だ。出会う人みんなに何かしら褒めてもらえるという天国とは雲泥の差。うなずいて、笑いながら、絵本を読んだ親子が「ねえお母さんは天国ってどんなところだと思う?」「どんな神様にいてほしい?」なんて会話をしてくれればしめたもの。「そうだなあ、りんごタルトが思う存分食べられるといいなあ」なんて一言があれば、きっといつかその時を迎えても、思い出に微笑みながらタルトを供えることができるはずだ。

余談だが、小学校へ入学したばかりの友人息子に贈ってみたところ、感想は「面白かったけど、すこし悲しいね」。隣り合わせの“面白い”と“悲しい”を不謹慎とせず、一緒に抱きしめてあげることができれば、本書はきっと読む人にとっての宝物になるだろう。このあとどうしよう、ではなく、このあとどうし“ちゃ”おう。ヨシタケさんのしのばせた遊び心を、ぞんぶんに楽しんでみてほしい。できれば一人ではなく、大切な人と一緒に。

文=立花もも

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