レシートに小説が!? 前代未聞の企画「レシート小説」はいかにして生まれたのか――【田丸雅智氏インタビュー】

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/14


 2016年8月15日(月)より三省堂書店全店にて、おそらく世界初であろう企画「レシート小説」が開始されている。この企画はショートショート作家・田丸雅智氏の著書『夢巻』文庫化を記念して実現したもの。8月15日(月)~21日(日)の期間中、三省堂書店全店にて文庫を購入すると、数百字程度の1話完結ショートショートが掲載されたレシートが発券される。なぜこのような企画が生まれたのだろうか。田丸氏にお話を伺った。

ショートショートだからこそできること

「ショートショートだからこそできること」を常日頃から探っているという田丸氏。今回の企画は、三省堂書店の人との会話から生まれたそうだ。

「ひょんなことからレシートの話題になり、三省堂書店さんはレシートの記載内容を独自にアレンジすることが技術的に可能と伺いました。そこで、分量が短いショートショートならば小説1編が丸ごとレシートに載ってしまうのでは?と思いつき、その場でご提案したんです」

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 その場の提案から実施までかかった期間はなんと1カ月未満だという。先鋭的であり、新しいこと、おもしろいことを仕掛けていくことを積極的に取り組んでいる三省堂書店と、スピード感や作家が自らの足で動くことで企画を生んでいくというスタイルを大切にしている田丸氏とのコラボだからこそ、この短期間での実現につながったのだろう。

プロの作家を目指さずとも、書くことにチャレンジしてほしい

 今回の企画がひとつのきっかけとなり、どんどんショートショートが身近なものになることを願う田丸氏だが、読むだけでなく書くこともチャレンジしてほしいという。

「プロの作家を目指さずとも、ショートショートを書くことは脳トレや知育、アクティブラーニングにもつながりますので、ぜひ挑戦してみていただきたいです。その際のアドバイスはひとつだけ、“楽しむこと”です。『自分には小説なんて書けない』などと自ら足枷をはめたりせず、自由に楽しみながら創作してほしいなと思います」

「レシート小説」といういまだかつてない企画を実現させた田丸氏だが、ショートショート大賞設立、小・中学校での出張授業や、一般向けのワークショップ開催など、これまでにも様々な取り組みを行っている。今後はどのような取り組みを考えているのだろうか。

「講座のほかにも、ゲストの方をお迎えしてその場で一緒にショートショートをつくりあげる『即興ライブ』を開催していたり、今後も書店さんとタッグを組んだ店頭での企画や、WEB上での企画など、たくさんのプロジェクトが進行していますが、業種を超えて、いろいろな方と一緒におもしろいことをたくさん仕掛けていきたいと思っています。自らが動き、自分で垣根をつくらずに、ショートショートだからこそできることにどんどんチャレンジしていきたいです」

 普段小説を読まない人でも気軽に読めることや、実際に書くことで脳トレや知育、アクティブラーニングにもつながるなど、様々な可能性を秘めているショートショート。今後田丸氏を中心に、さらに盛り上がっていきそうだ。まだショートショートの世界に触れたことがない人はこの機会にぜひ触れてみてはいかがだろうか。

■「レシート小説」
実施店舗:三省堂書店全店
実施期間:2016年8月15日(月)~21日(日)
文庫購入者に数百字程度の1話完結ショートショート(=レシート小説)が自動発券される。

ショートショートを書きたいと思った方に…

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