29周年のお料理雑誌『レタスクラブ』が最近”攻めてる”理由とは?人間の黒い部分もあえて見せていく!

暮らし

2016/11/10

『レタスクラブ』編集長・松田紀子氏

 雑誌『レタスクラブ』にどんな印象を持っているだろうか。「料理上級者向け」「主婦が読むもの」「ちょっとハードルが高い感じ」……? 少し前の『レタスクラブ』ならその印象はたしかに当たっていたかもしれない。しかし現在の『レタスクラブ』はちょっと違う。というのも、2016年6月に編集長の交代があったからだ。


 さらに、雑誌『ダ・ヴィンチ』の別冊付録として好評を博していたコミックエッセイ集『別冊ダ・ヴィンチ』(通称:別ダ)が、今年から『レタスクラブ』に引っ越して『別冊レタスクラブ』(通称:別レ)に変わる。執筆陣は、たかぎなおこさんや松田奈緒子さん(編集長の実姉!)、コンドウアキさんなどの他に、池辺葵さんや魔夜峰央さん、ラズウェル細木さんや『極道めし』の土山しげるさんなど豪華ラインナップ。

 正直、ちょっと“攻めてる”感じがする最近の『レタスクラブ』。その仕掛け人である松田紀子編集長にお話を伺った。

ちょっと攻めてる『レタスクラブ』、要となるのはコミックエッセイ

──さっそくですが、最近の『レタスクラブ』って少し印象変わりましたよね?

松田紀子編集長(以下、松田)久しぶりに『レタスクラブ』を読むという人はもしかしたらギョッとするかも(笑) 1番大きく変わったのはコミックエッセイの連載が始まったことです。漫画『ワカコ酒』でおなじみの新久千映さんや、アメブロ猫ランキングで第1位を獲得された卵山玉子さんなど、9人の方に描いていただいています。

──コミックエッセイを取り入れようと思った理由はなんですか?

松田 お料理とコミックエッセイって一見異なるジャンルですが、どちらも「日々の小さなできごとを楽しもう」「いつもの生活大切にしよう」という世界観が似ているので、お互いなじみあうのでは? と思いまして。

──わかる気がします。読者の反応はどうですか?

松田 アンケートを集計するとコミックエッセイが「おもしろかった記事」の2位や3位に入っているものもあるんですよ。ただ、賛否がはっきり分かれるものもありますね。

──ちなみにどの連載か、伺ってもいいですか?

松田 野原広子さんの『離婚してもいいですか? 翔子の場合』です。今までの『レタスクラブ』では絶対に扱わなかったテーマなので、やっぱり賛否両論でした。「不愉快だ」って言う人もいるし「自分のことかと思った」って共感してくれる人もいる。もともと物議を醸した方がおもしろいだろうと狙ってはじめたので、とてもうれしい反響です。

──たしかに「共感」ってコミックエッセイならではの感覚かもしれませんね。

松田 そうなんですよ。『レタスクラブ』のメインである料理の特集は「おいしそう」とか「作ってみたい」って感想が多いかと思います。もちろんそれが本質ですが、思わず「わかる!」って共感できる、料理を頑張っている姿や失敗して悩んでいる姿を描いたものがあるともっとおもしろくなるんじゃないかと。

──それこそ、今回の29周年記念号はコミックエッセイ集である『別冊レタスクラブ』が付録ですよね。やはり「共感」という点は意識されましたか?

松田 そうですね。テーマをあまり限定せず「私の暮らしぶり」としたのは、いろいろな話があった方が共感できる部分が増えると思ったからです。漫画家さんから上がってきた原稿にはあえてほぼ手を入れていません。リアルな話の方がより共感しやすいと思うので!

ぐっと読者に近付きたいから人間のリアルな部分もさらけ出す

──松田さんのもとで少しずつ印象が変わってきている『レタスクラブ』ですが、長年続いているものを変化させるのはかなり大変なんじゃないですか?

松田 もちろん一筋縄ではいかないですね。でも、可能性は見えてきました。『レタスクラブ』はすごくしっかりした真面目な雑誌で、それがいいところなんですが、少しだけならそれを崩してみてもいいんじゃないかと。編集メンバーによく言っているのは、「正しさより楽しさ」。正しい情報はもちろん大事だけど、それ以上に読後感が楽しいものであってほしい。これはコミックエッセイを編集する際も気をつけているところなんですが。

──真面目さを崩したいと思った理由を教えてください。

松田 これは自分の経験から言えることなんですが、雑誌を読んで知らなかった知識や新しい価値観に触れられるとうれしいじゃないですか。そういう機会を増やすには、幅広い内容の記事があった方がいいと思うんです。「松田さんが編集長になってから統一感がなくなった」って言われることもあるんですけど(笑) でも、あえて違和感を残したいんです。その方が印象に残るはずだから。

──今後の『レタスクラブ』はどういう変化をしていく予定ですか?

松田 これまでにはなかった「感情のリアルさ」がどんどん増していければと思います。みんな雑誌のなかのようなキレイな世界に生きてるわけじゃないですよね。これまでの『レタスクラブ』では触れてこなかった人間の黒い部分もさらけ出すことで、「よかった、こんなこと考えてるの私だけじゃないんだな」って読者の励みになればいいと思っています。だから、漫画『ママはぽよぽよザウルスがお好き』のベテラン漫画家青沼貴子さんに50代のせきららな悩みを描いてもらったり、『ラブレス』の桜木紫乃さんに読者の悩みに答えてもらったり、リアルな企画を用意しています。

──これまでの『レタスクラブ』よりぐっと読者に近付いたような気がしますね。

松田 もともとの読者の方はすこし戸惑うかもしれないんですが、その違和感をおもしろいと思ってもらえたらうれしいです。逆にこれまで『レタスクラブ』に触れたことのない人たちには親しみやすくなったんじゃないかと。「料理が得意な人のための雑誌」ってイメージがあったと思うんですが、わかりにくいレシピには写真を細かく入れたり、難しいテクニックのいらない料理を特集したり、料理が苦手な人でも楽しめるようにしています。

──勝手に「主婦や料理好きの人のための雑誌」だと思ってました……!

松田 食べることに「既婚か独身か」「料理ができるかできないか」は関係ないですよね。
忙しくてコンビニ弁当ばっかり、なんて人にもぜひ『レタスクラブ』を読んでほしいと思っています。私自身、忙殺されて料理する時間なんてなかったんですが、ありあわせのものでも自分でつくったお弁当を食べると“整う”感じがしたんです。生活にひと手間加えるだけで、自分を大切にしていると感じる。『レタスクラブ』がそのきっかけになったらいいなと思います。

 ちょっと“攻めてる”最近の『レタスクラブ』の変化は、松田編集長のもっと読者と近付きたいという思いから生まれたものだった。たしかに雑誌のなかの美しい世界は魅力的だが、自分の生活と距離を感じてしまうのも事実。共感を呼ぶコミックエッセイや、リアルさを追求した新企画など、読者によりそった内容に変わった『レタスクラブ』は、これからもっと多くの人に愛される存在になりそうだ。

 11月10日(木)に発売された29周年記念号では、いらない手間を省いた「お母さん先生にならう楽うまおかず」や「味つけのお悩みQ&A」など、料理弱者にとってもうれしい特集が目白押し。さらに18本の描き下ろし漫画が読めるコミックエッセイ集『別冊レタスクラブ』や、A3サイズの書類がすっぽり入るスヌーピーのトートバッグが付録としてついてくる。

 自分の生活を見つめ直すきっかけとして『レタスクラブ』を1度手にとってみてはどうだろうか。

取材・文=近藤世菜