東京女子×上京女子 vol.1「女の友情は物理的距離で壊れる!? 」

文芸・カルチャー

2016/12/16

 仕事に恋愛、そして結婚。女性が自分の人生に対して抱いている不安や葛藤を、裕福な家に育った東京女子と雑草系の上京女子、それぞれの視点から描いた山内マリコさんの小説『あのこは貴族』(集英社)。その発売を記念して、東京で働く独身アラサー女子を集め「東京女子×上京女子」の座談会を開催した。

交友関係や地元への愛着、恋愛や結婚に対する価値観、今後のキャリアプランなどの話題で大いに盛り上がった今回の座談会。その様子を5回の連載にわたってレポートする。

<参加者プロフィール>
●東京女子
東京Aさん(33歳)
東京都出身。中高一貫の女子校を卒業後、都内の国立大学に入学。企業でのSE経験を経て、現在はフリーライター。

東京Bさん(32歳)
東京都出身。小中高と地元の学校に通った後、都内の私立大学に入学。現在は、出版社に勤務している。

東京Cさん(23歳)
東京都出身。中高一貫の女子校を卒業後、都内の私立大学に入学。まだ社会に出たばかりの新人営業女子。

●上京女子
上京Dさん(31歳)
静岡県出身。地元の県立高校を卒業後、大学入学を期に上京。現在は金融関係の企業に勤務している。

上京Eさん(27歳)
長野県出身。滋賀県の大学に入学したのを期に地元を離れる。就職のタイミングで上京してきた。職種はデザイナー。

上京Fさん(26歳)
熊本県出身。地元の私立中高一貫校を卒業後、大学入学を期に上京。現在は出版社に勤務している。

生まれ育った環境は、人間の性質や価値観にどれだけの影響を及ばすのだろうか。「独身」「アラサー」「女」という共通点を持ちながら、東京で生まれ育った「東京女子」と進学や就職を期に地方から上京してきた「上京女子」が一堂に会した今回の座談会。

はじめに、東京女子と上京女子がお互い感じている差異について質問すると、それぞれの交友関係について話題が発展した。

女友だちって、定期的に会わないと友情が続かない

──上京女子のみなさんにひとつ聞きたいと思っていたのが、地元の女友だちとの関係です。普段は離れて暮らしているわけですが、会ったときにどんな会話をするのかなということで。話題が合わないんじゃないかなって思うんですが。

上京Eさん(以下、上京E):そもそも、地元の友だちって言われて思い浮かぶ人がいないかも……。帰省しても家族や親戚にしか会わないんですよね。

上京Fさん(以下、上京F):私もです! 中高は私立だったんですが、そのときの友だちはだいたい上京しちゃってるので……。

──え、なんだか意外です!イメージとして 地方のほうが地域コミュニティの結束が強い気がしていました。

上京E:私も、地元の友だちはほぼいないですね。上京してから一度会う機会があったんですけど「東京に憧れて上京したんでしょ」って前提で話されるのが嫌で。それから疎遠になってしまいましたね。

上京Dさん(以下、上京D):私思うんですけど、東京出身の人のほうが地元の友だちと仲良くやってる気がします。

──東京女子の方々、どうでしょう。

東京Bさん(以下、東京B):たしかにそうかもしれないです。私ずっと実家に住んでるんですが、毎年地域のお祭りで地元の友だちと集まりますね。地元の学校に通ってたので、小中高ずっと一緒って人が何人もいるんです。

東京Aさん(以下、東京A):私は中高一貫の女子校に通ってたので、正確には地元の友だちとは言えないんですが、仲の良かった同級生の子とは今でも頻繁に会ってます。

──ちなみにみなさん、今一番仲の良い女友達ってどこで出会った人ですか?

東京Cさん(以下、東京C):私も中高一貫女子校だったので、中学のときの同級生ですね。

東京A:私も中学です。

東京B:幼稚園から一緒の地元の幼馴染。

上京D:大学の友だちですね。

上京E:上京してきたときに出会った会社の同期かな。

上京F:大学です。

──東京女子と上京女子ではっきり差が出ました……! 上京女子のみなさんは地元より上京してきたから出会った友だちの方が、仲が良いということですね。

上京F:意識して区別しているわけじゃないんですが、地元の友だちとはもう接している世界が物理的に違うんですよ。だから、会ったり連絡をとったりする機会がどんどんなくなっていくっていう……。

東京C:たぶん、女同士の友情って定期的に会うほうが続くんだと思うんです。何の用もないのに「近況報告会」って感じで女子会が開催されるじゃないですか。そんな短期間のうちに変化なんてない!と思いつつ参加するんですけど。

東京女子は「マイルドヤンキー」と変わらない?

──『あのこは貴族』に登場する華子もそうですが、東京女子って所属するコミュニティがほとんどずっと変わらないんでしょうね。

東京A:『あのこは貴族』でも書かれていましたが、東京が地元の場合、物心ついたときからずっと、周囲にいる人はみんな自分と同じような生い立ちや価値観を持つひとばかり。最近になってようやく、自分のいた世界がどれだけ狭かったか気づきました。東京女子っていわゆる「マイルドヤンキー」と同じだと思うんです。

東京C:そうなんですよ。東京って一見、いろいろな人が集まるから多様性があるように思うんですけど、自分の周囲だけ見るとむしろ画一的な気がします。

──一方で『あのこは貴族』の美紀と同じ上京女子のみなさんは、住む場所が変わることで関わる人たちも変わってきたと思うのですが。

上京D:うーん、でもあんまり意識したことないですね。そもそも相手が東京出身かどうかみたいな基準がない。自分と出身地が違う人なんだなっていうだけなので。

上京F:一緒に上京してきた友だちも、東京にでできた友だちもみんなそれぞれ良い人たちだし大好きなので、あまり違いを感じることはないですね。

東京B:もしかしたら、東京女子の方が育った環境に縛られているのかも……。同じ東京生まれでも。どの地域の出身か通っていた学校はどこかで、区別して考えちゃう気がする……。

意外なことに、多様な人が集まっている東京で生まれ育った東京女子の方が、固定化したコミュニティに縛られているのかも……という事実が見えてきた。『あのこは貴族』のなかでも、東京の上流階級で生まれ育った東京女子・華子はどこか閉塞感のある世界に縛られているのに対して、自分の生まれ故郷を飛び出してきた上京女子・美紀は、そんなクローズドなコミュニティを客観的に見ることができている。ただこれは、作中で美紀が思っているように、生まれ育った場所が東京か地方かという違いではない。ずっと変わらない環境のなかに安住していることで「カルマ」が生まれてしまうのではないだろうか。

次回のテーマは東京女子が抱える「東京のカルマ」について。上京女子が思う、東京女子の”不自由さ”について話が及ぶ。【vol.2は12月17日(土)11:00公開予定】

取材・文=近藤世菜

あのこは貴族』(山内マリコ/集英社)