「こういうのあるある!」―大人が読んでも面白い! ヨシタケシンスケのイラスト付きで学ぶ、使える「ことわざ」

文芸・カルチャー

2017/1/18

 小学生の時、母親が買ってきた五味太郎の「ことわざ絵本」シリーズ(岩崎書店)が面白すぎてどはまりし、一時ことわざの本や辞典を買い漁っていた。ことわざには昔の人たちの発想力や知恵、言葉遊びや膨大な物語が詰まっており、知れば知るほど頭の中が豊かになる。そしてたった一言で様々な事象を表現することができる、とても便利な言葉だ。

 先日、そんなことわざを分かりやすく楽しく紹介する、『ことわざ生活 こっち篇』(あかいわしゅうご:文、ヨシタケシンスケ:絵/草思社)、『ことわざ生活 あっち篇』(あかいわしゅうご:文、ヨシタケシンスケ:絵/草思社)という本が新たに出版された。「こっち篇」には自分に気付くことわざ、「あっち篇」には自分の周りが見えてくることわざが集められている。ことわざというと「堅苦しい」という印象を持つ人もいるかもしれないが、本書は子どもでも読みやすいよう、イラストやツッコミでその堅さが払拭されている。

 今回は、その一部をご紹介しよう。

■「水魚の交わり」(あっち篇・P.10)

水と魚が切っても切り離せないように、離れることのできない親密な間柄のこと。夫婦の仲がむつまじいことのたとえ。

 魚が水の中を気持ちよさそうに泳ぐ姿が浮かぶ、このことわざ。魚にとって水は、なければ死んでしまう必要不可欠な存在だ。イラストでは、主婦2人が自分と旦那の関係を「水と魚」なのか、反対の意味を持つことわざ「水と油」なのかと話し合っているのだが、「水と油」派の主婦の苦さを含んだ表情が素直すぎて思わずふっと笑ってしまう。このことわざを見ると、ついつい周囲の人たちを組み合わせて想像してしまう人も多いのではないだろうか。

■「市に虎あり」(あっち篇・P.103)

町に虎が出たというデマは、一人から聞いても信じないし、二人から聞いても疑わしい。しかし、三人から聞くと信じてしまう。

 いつの時代も、噂話が好きな人は多い。特に今はSNSで誰でも不特定多数の人間相手に拡散でき、広がる速度も計り知れない。しかし、流された噂の出どころや証拠をきちんと確認する人は少ない。結果、このことわざのようにデマ情報が拡散され、居もしない「虎」によって騒然となることも多い。イラストで女性が「鼻にアスパラをつめるとデマにまどわされない」ととんでもない噂を吹聴しているが、よく考えると自分も同じくらい根拠が不確かな噂に惑わされている気がする。

■「木を見て森を見ない」(こっち篇・P.12)

細部に気をとられ、全体を見ようとしない。

 誰もが「あるある!」と感じるであろうことわざ。客観的に見ていると、「そこ気にする前にもっとあるでしょ!」と言いたくなるが、当人は意外と細部の方が気になってしまうもの。部屋全体が散らかっていても引き出しのペン類の向きに目がいってしまう筆者としては、とても耳が痛い。

 しかし逆に「灯台下暗し」(こっち篇・P.28)というケースも多いのが人間。「ひとは身近なことには、案外気がつかないものだ」と解説されている通り、散々探してなかったものが目の前のテーブルの上にあった、なんてこともある。人というのは、なぜこうも的外れなことをしてしまうのか……。

■「思い立ったが吉日」(こっち篇・P.84)

何かをしようと決意したら、すぐに取りかかるのがよい。

「あとで」と思ってやらないでいると、結局そのまま終わってしまうことが多い。もしくは、悩みすぎて時期を逃してしまう。「やろう」と思い立った、モチベーションの高い状態で挑むことが達成への近道ということだろう。イラストでは、おじさんがよく分からない機械を前に「やっぱり返品しよう!」と決断している。おそらく勢いで買ったのだろうと思うとこのことわざに矛盾も感じるが、買わずに悩み続けるよりはよかったのかもしれない。

 この「ことわざ生活」シリーズを読みながら思考を巡らせていると、様々なことが頭に浮かんできてキリがない。本来は子ども向けに出版された本だが、大人が読んでも十分考えさせられる。ぜひともイラストも一緒に見ながら読んでみてほしい。身近なことからオリジナルのことわざを編み出し、内輪で使ってみるのも楽しいもの。もしかしたら、今何気なく発した“ことわざもどき”が、数十年後、数百年後、ことわざとして広まっているかもしれない。

文=月乃雫