『深夜食堂』『海街diary』…あの映画や人気CMのフードスタイリストによる さりげなくおしゃれで美味しい家庭料理レシピ!【作ってみた】

食・料理

更新日:2017/1/27

『今日も食べたいごはん』(飯島奈美/ぴあ)

 テレビや映画の中で、ときに主役であったり、日常のさりげないワンシーンの脇役だったり、必ず登場する料理。著者は「かもめ食堂」をはじめ「深夜食堂」、「海街diary」など人気の映画や、さまざまなテレビCMのワンシーンを彩る料理のスタイリングを手がけるフードスタイリスト・飯島奈美さん。飯島さんによる最新オリジナルレシピ集『今日も食べたいごはん』(ぴあ)は、季節ごとに、飯島さんがいちばん好きという普段の飾らない、旬の食材を用いた料理レシピが紹介されています。

 さらに「昔懐かしい喫茶店メニュー」や「ほっとする京風おばんざいを味わう」、「お父さんが活躍する料理」などのテーマごとに飯島さんのエッセイを添えたレシピ、そして目にも美しいデザートメニューのあれこれ。フードスタイリストとあって、家庭料理といえども、ビジュアルはもちろん、ひと工夫されていて美味しい! さすがプロと思えるアイデアがちりばめられたレシピが盛りだくさんです。

1、温まって、みんな満足。アンコール必至の「煮込みハンバーグ」(p.17)


 まずは冬メニュー「みんなが集まるときの料理」から、煮込みハンバーグを作ってみました。煮込みハンバーグといっても写真のようにピンポン玉くらいのミートボール状なので、みんなでシェアもしやすくて、火の通りも早いから煮込み時間も短くてすみます。

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 なるほど著者がパーティー料理もコツは〝がんばりすぎないこと“と書いてあるように、30分で完成するようにと考案されたレシピだそう。

 ハンバーグ種は合いびき肉とともに豚の細切れ肉を混ぜこんでいるから、食べごたえもアップするとともに、煮崩れしにくいのもポイント高! 20個以上の小さなハンバーグができました。ハンバーグは焼かずに、トマトジュースやソース、ケチャップなどの煮汁を入れた鍋にそのまま入れて、たっぷりのきのこたちや玉ねぎ、赤パプリカを加えて煮ます。ソースの量に対して、こんなに野菜を入れて大丈夫!? と一瞬思ってしまいましたが、蓋をして煮込めばすぐにいいダシになってくれます。油も使わず、野菜もたっぷりのおかげか、コクがあってまろやかなのに、しつこくない。ソースに加えるプルーンもまた味に深みを与えてくれます。体にやさしく、満足感ある一品です。

2、シンプルに、パパッとできて彩そえる、ブロッコリーのペペロンチーノ(P.16)


 「みんなが集まるときの料理」からもう一品、気の利いた副菜、ブロッコリーのペペロンチーノも作ってみました。こちらはメインの煮込みハンバーグを煮込んでいる間に、出来ちゃいます、と著者が提案。

 ペペロンチーノの基本となるオリーブオイル、薄切りしたにんにくと鷹の爪を弱火にかけます。にんにくは香りが出るまで、少し焼き目がつくぐらいに、焦がさないように気をつけて。1~2分塩ゆでしたブロッコリーを加え、さっと炒め合わせます。ブロッコリーはゆですぎると、色や食感も落ちてしまうし、ゆで足りないとゴリゴリするので見きわめが大事です。ゆでる際、塩は多めでしっかりとブロッコリーに味をつけておくのもポイント。

 そしてお皿に盛りつけたら、炒めておいた松の実を散らします。松の実もうっかりするとすぐ焦げてしまいがちなので、注意しながら弱火で炒めます。なかなか松の実は常備していないご家庭が多いと思いますが、この大さじ1杯の松の実が、ともすれば青っぽいブロッコリーメインの料理に、小さな森が口の中に広がるような味わいをもたらしてくれるように感じました。シンプルでいて短時間でできるだけに、タイミングが肝心です! ブロッコリーのこんもりした緑とオリーブオイルできらきらした鷹の爪の赤が目にも鮮やかで食欲をそそります。

3、炊飯器で簡単!素材の味が活きるアジアンすぎない、鶏ごはん(P.34)


 こちらも冬メニューから鶏ごはん。シンガポールやマレーシア料理店などにある海南鶏飯です。本書の「鶏ごはん」のレシピを見てみると、食材も作り方も思いのほかシンプル。そんなわけで今回初挑戦してみました。

 炊飯器に鶏もも肉をそのままポンとごはんと一緒に塩少々としょうがのスライスを混ぜ入れて炊くだけ。ごはんの水は少なめで炊くのですが、炊きあがると鶏肉からいい具合に脂がにじみ出て、ごはんも鶏の脂にコーティングされてつやつや! じんわり鶏から出たダシの旨味も浸み込んでいます。鶏もも2枚を使うので、ボリューム満点、中まで火が通っているのにやわらかくてジューシーなのです。

 別添えするしょうゆ、酢、味噌、さとう、千切りしょうがなどの合わせダレがまた絶妙。好みでしょうゆの半分をナンプラーに代え、パクチーを盛り付けいただきました。鶏飯もさまざまなレシピがあるのでしょうが、こちらはアジアン度控えめで上品なお味。ショウガが効いているせいか、鶏肉独特の臭みも気にならず、鶏皮ごと食べられました。冬の日にしょうがで温まり、鶏のコラーゲンで乾燥から守ってくれる、冬メニューとして紹介されているのが納得の一品でした。

文=早川いづみ