『スヌーピー』を「アメリカの宝」と絶賛! オバマ前大統領からのメッセージ。アメリカ人にとって“PEANUTS”はどんな存在?

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公開日:2017/2/17

 スヌーピー。日本の子どもたちにとっても、数多くのキャラクターグッズや書籍にアニメと、幼少の頃から親しんでいるキャラクターだ。原作は、チャールズ・M・シュルツ氏による新聞連載のマンガ“PEANUTS(ピーナッツ)”というのは周知の通り。アメリカ人で知らない人はいないと言われるほどだ。ただし、このタイトル、作者によるものではない。

 本書『SNOOPYと学ぶアメリカ文化』(加藤恭子/ポプラ社)によれば、1950年代に放映された人気テレビ番組で、一部の子どもが座る場所を「ピーナッツギャラリー(子どもたちの席)」と名付けた。そこで番組の成功に目をつけた出版社側がタイトルを用意したらしい。“ピーナッツ”とは、スヌーピーの飼い主のチャーリー・ブラウンを始めとする、かなりチャーミングな子どもたちのことを表しているのだ。本書でも主な人物一人一人の詳しい紹介があり、誰もが愛される存在だ。

 さて、スヌーピーを除くピーナッツの面々を、日本人はきっちり覚えているだろうか。熱烈なファンやマニアを除けば、残念ながらチャーリー・ブラウンだろうが、ウッドストックだろうが「あ、スヌーピー(に出てくる誰だっけ?)」というつぶやきできっと終わってしまう。では、アメリカ人はどれだけ、ピーナッツに思い入れがあるのか。本書に紹介されている、オバマ前大統領がピーナッツのコンプリート版の最終巻に寄せた序文は、アメリカ人の気持ちを代表しているのではないだろうか。

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「何百万のアメリカ人と同様、私もピーナッツと共に成長した。でも、まだ卒業していない。長年にわたり『ピーナッツ』は、私たち自身の“安心毛布”だったのだ。そして、長い長い間、『ピーナッツ』は、われわれ少年の日常の、“安心毛布”だった。それこそが、『ピーナッツ』をアメリカの宝物にした所以なのだ」

 先日のアメリカ大統領選は、まさかの結果で世界に衝撃を与えた。さらに指定7ヵ国のアメリカ入国禁止の大統領令に対し、国内外からの強い非難と抗議がある一方で、トランプ大統領の入国禁止措置を支持する人々は、世論調査でなんと49%に達したとの報道があった。果たしてこの大統領は、支持者が思い描くようなアメリカの新たな“安心毛布”となり得るのだろうか。世界各国からの注視は続く。

 著者はフランス中世文学の学者で、夫の助教授招聘に伴い渡米。1960年代の数年間をアメリカで子育てをしながら研究の日々を過ごした。アメリカ暮らしのなか、ピーナッツを知り、4コママンガでアメリカ文化を学んだ。

 本書は時々ピーナッツのマンガも楽しみつつ、アメリカ人の思考や行事を知ることができる。特に「精神分析医に相談を」の項目に、日米文化の違いが垣間見える。なお、マンガの日本語訳は、詩人の谷川俊太郎氏によるもの。道理で、哲学に通じる秀逸な名言が飛び出すわけだ。

 刻々と変容する大国。文化を根本から改めて理解しておきたい。

文=小林みさえ