脳内物質を『エヴァ』にたとえると……? 精神科医が教える「脳の最適な使い方」

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公開日:2017/3/21

『脳を最適化すれば能力は2倍になる 仕事の精度と速度を脳科学的にあげる方法』(樺沢紫苑/文響社)

 「脳の機能を十二分に引き出せばあなたの仕事は変わる」――。本書『脳を最適化すれば能力は2倍になる 仕事の精度と速度を脳科学的にあげる方法』(樺沢紫苑/文響社)は、精神科医の著者だからこそ書けた「脳内物質を味方にした仕事術」を教えるオンリーワンのビジネス書だ。

 近年の脳科学の進歩により、脳の機能はかなり解明されてきているという。やる気、集中力、記憶力、想像力などについて、脳のどの部分がどのように関与し、その効果を高めるためには何をしたらいいのかということまで、具体的に分かってきているそうだ。

 その「最新知見」を無視して、いつまでも「根性論」や「精神論」で仕事を続けることは、非効率だし、最悪の場合、カラダを壊してしまうことだってあるだろう。

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 本書は7つの脳内物質を最大限に、バランスよく活用することをおススメしている。面白いのは、それらを大人気アニメの『新世紀エヴァンゲリオン』にたとえているところ。

 碇シンジは「ノルアドレナリン」。一言で言うなら「闘争か逃走か」の脳内物質。追い詰められた時に生じるので、恐怖と不安という感情と結びついている一方、「集中力」を高めることができ、例えば「期日までに商品を納品できないと、会社に損失が出てしまう」といったようなプレッシャーを利用し、仕事の効率を劇的に高めることができる。

 ただし、この状態が恒常的に続く場合、ストレスが溜まり身体によくないので、あくまで「短期集中」として活用すること。

 惣流・アスカ・ラングレーは「ドーパミン」(幸福物質)。ドーパミンはモチベーションの源。常に高い目標を持ち、それに突き進んでいくアスカは、この脳内物質を象徴しているキャラクターなのだとか。

 他にも、「心の安定や平常心」をつかさどる「セロトニン」は綾波レイ。大胆で行動的な葛城ミサトは「闘争ホルモン」の「アドレナリン」。冷静に仕事をこなす科学者の赤木リツコは「発想力と集中力」を担う「アセチルコリン」。謎めいたキャラクターの渚カヲルは「僧侶が荒行の末、悟りの境地に達したときに分泌されるエンドルフィン」。良質な睡眠に役立つ「メラトニン」は鈴原トウジ(シンジの同級生で、体育会系の男子生徒。いつも授業中に居眠りをしているから)。

 こんな風にエヴァのキャラで説明してもらえると、馴染みのない名称にも親近感が持てたし、おおよそのイメージを掴めたので、それぞれの説明と、その活用術の詳細に入った時、とても読みやすかった(トウジはちょっと、こじつけだったかもしれないが……笑)。

 ここで渚カヲルがイメージキャラクターの「エンドルフィン」についてご紹介したい。「エンドルフィン」は「究極のストレス解消物質」。大きなストレスがかかった時に分泌され、「鎮痛効果」「多幸感」「恍惚感」を得ることができる。ランナーズ・ハイの原因もエンドルフィンであることが判明しているそうだ。

 このエンドルフィンは極限状態のストレスがかかった時以外にも分泌されることが分かっている。それは「癒し」「リラックス」と関係しており、例えば愛するペットとの「さわる」「なでる」といった親密な触れ合いで濃度は上昇するとか。

 エンドルフィンは脳を休め、集中力、記憶力、創造性などの脳機能を高めてくれる一方、免疫力を高めたり、抗癌作用もあったりすることが確認されている。意識して生活に取り入れることができたら、とんでもなく強い味方になる脳内物質なのだ。

 では、どうやったらエンドルフィンが出るのかというと、「好きな音楽を聴く」「大好物を食べる」「瞑想、ヨガ、座禅をしているとき」など、「癒しの時間」を持つこと。また「運動をする」「激辛料理・チョコレートを食べる」「熱い風呂に入る」のも物理的にエンドルフィンを出すテクニック(ただし、『気持ちいい』と感じることが大切)。さらに「人に感謝する、感謝される」ことでも分泌されるという。

 概要だけをかいつまんで書き連ねてしまったが、本書にはしっかりと「科学的根拠」も書かれているので、詳細を知りたい方はぜひご一読いただき、「脳内物質」を人生の味方につけてほしい!

文=雨野裾