詐欺、怪現象、ご近所トラブルを華麗に解決!『イニシエーション・ラブ』作者が描く、不動産を巡る短編ミステリー

文芸・カルチャー

2017/5/18

『物件探偵』(乾くるみ/新潮社)

映画化もされ大ヒットした『イニシエーション・ラブ』の作者 乾くるみが描く最新作は、不動産を巡る短編ミステリー『物件探偵』(新潮社)だ。

タイトルの物件探偵とは、地味なグレーのスーツ、黒髪ストレートのロングヘアがトレードマークの不動尊子のことである。年齢30歳前後で小柄な尊子は、知人から不動産と同じ発音で不動さんと呼ばれている。それゆえ不動産と縁があると感じ、15歳の時に宅地建物取引主任者証・通称「宅建」の資格を取得。不動産がらみのトラブルを抱える人々の元を突如訪問、不動産詐欺、アパートで起こる怪現象、ご近所トラブルから巻き起こる怪事件などを華麗に解決していく。

きちっとスーツを着こなし、知的な顔立ちの尊子は、一見するとまともな人物だ。しかし、彼女は物件の気持ちがわかるという奇妙なところがあった。第一話「田町9分1DKの謎」では、利回り12%の老朽マンションを購入したものの、すぐに入居者が退去してしまい、思うように家賃収入を得られない主人公 中山繁行の元に尊子が現れ「物件が泣いています」と言いながら、高利回りの裏に隠された罠を暴いていく。ちょっと不気味であり、ちょっと不思議な尊子だが、豊富な不動産の知識を活かしミステリーを解決する姿は名探偵そのもの。そのため読者も、謎解きを楽しみながら、自然と不動産の知識を得ることができる。

また、本書は著者が仕掛ける不動産を利用した謎も魅力的だ。老朽化しているのになぜだか高利回りのマンション「田町9分1DKの謎」の他、誰もいない部屋で勝手にHDDの録画がはじまる怪アパート「小岩20分一棟売りアパートの謎」、部屋の真ん中に新幹線の座席が取り残されたまま売りに出されたマンション「表参道5分1Kの謎」など、6篇の短編が掲載されており、そこには巧妙な罠が隠されている。現実世界で登場人物と同じように事件に巻き込まれてしまったら、コロッと罠に引っかかってしまう人も多いのではないだろうか?

日常を過ごす中で誰もが関わる不動産。本書に登場する人々のように不動産がらみのトラブルや、事件に巻き込まれることは決して珍しくはない。いざという時、罠にかかって不動産に騙されないためにも、本書を読んで知識を身に着けてみてはいかがだろう。

文=舟崎泉美