「うつ」になる人、ならない人の違いとは? うつを経験した医師が語る処方箋

ライフスタイル

2017/6/14

『自分の「うつ」を治した精神科医の方法(イラスト図解版)』(宮島賢也/河出書房新社)

 厚生労働省が3年ごとに行う「患者調査」によると2014年のうつ病をはじめとする「気分障害」の患者数は111.6万人。これは医療機関を受診した人に限られているので実際はもっと多く、病気というほどではないが気分がすぐれない「予備軍」も含むと1000万人、つまり国民の約10人に1人が該当すると言われている。

 そんな、誰もがそこはかとなく怯える「うつ」。しかしこれだけ広く認知されているとはいえ、私達はうつの実態をよく知らない。「結局打たれ弱い人がなるんでしょ」「心の風邪に大げさだよ」なんてセリフはよく聞くし、一方で過労死や自殺をした人の多くがその死の直前にうつを患っていたというから、侮れない深刻な病だとも感じている。

 本書『自分の「うつ」を治した精神科医の方法(イラスト図解版)』(宮島賢也/河出書房新社)のテーマはズバリどんな人がうつになるのか、どうしたら治るのか。自身も7年に及ぶうつを経験した医師の話だ。うつになる人、ならない人、その最大の違いは考え方だという。

 うつになる人は、いやなこと、よくないことばかりに目が行き、うれしいこと、楽しいことに目が向かなくなっていく傾向があります。~中略~また、うつになる人は、自分を責める傾向があります。

 では、どうしてそういう考え方をするのか? 突き詰めれば親の育て方と本人の性質が合っていなかったからだという。例えばよい学歴をつけるため、親が子どもに勉強を強要するとしよう。親は良い成績をとった時はご機嫌だが、悪かったら落胆して口もきかない。すると子どもは無意識に「成績の悪い自分は認められない」と感じ、テストで失敗するたび「自分はなんてダメなんだ」と思う。子ども時代からこれを繰り返すと、他者からの評価を恐れ、物事をネガティブにとらえる癖がついてしまう。親は良かれと思っているし、幼い子どもが悪いわけがない。どちらを罰しても無意味だ。ではどうするか?

 本書が自分でできることとして推奨しているのがアファーメーション(肯定的自己暗示)だ。朝、目が覚めたときに自分を肯定する文言「自分は自分に自信がある」などを嬉しい気持ちで唱える、それだけ。お金がかからないし、実行していることが他者に知られもしない。しかも効果は絶大で、著者はこれを毎日続けたら半年後には自分大好き人間になった。ちなみにベストセラー『うつヌケ』(田中圭一/KADOKAWA)の著者もこれで救われている。もう1つは食事療法。野菜中心の食べ過ぎない食生活で、心身が蘇る。

 著者は「薬に頼らない精神科医」を名乗っているが、決して医師による診断やすべての薬を否定しているわけではない。辛いときは医師に相談、これは鉄則だ。ただ薬を飲むことでとりあえず症状を抑えるのでなく、心と身体に働きかける本質的アプローチがあること、そしてそれは一見面倒だが自分らしい暮らしへの近道かもしれない、と知っておいて損はない。うつの渦中にいる方はもちろん、その周りで困惑している人々にもおすすめの一冊。

文=青柳寧子