テリー伊藤と堂場瞬一が、こだわりの愛車から自動運転の未来まで語る「これからの車の話をしよう」イベントレポート

文芸・カルチャー

2017/6/20

犬の報酬

著:
出版社:
中央公論新社
発売日:
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50台以上の愛車遍歴を誇り、車に関する書籍も多数出しているテリー伊藤。車への造詣が深く、最新刊『犬の報酬』(中央公論新社)では“自動運転”をモチーフにした作家の堂場瞬一。今回は『犬の報酬』出版記念として、そんな車偏愛家の二人による「これからの車」についてトークイベントが行われた。車が大好きな二人だからこそ思う、未来の車のあるべき姿とは?

テリー伊藤(以下、テリー) まずは、堂場さんの愛車遍歴についてお聞きしたいところですね。今までどんな車に乗ってこられたんですか?

堂場瞬一(以下、堂場) 一番初めはホンダのCR-X(シーアール-エックス)という車ですね。すごく小さなFF(前輪駆動)のスポーツカーなんですけど良い車で、これで運転を覚えました。そのあとにバイエルンの会社に乗り換えて、それからはずっと。僕、同じメーカーの車に乗り続ける傾向があって。

テリー 浮気性じゃないんだ。

堂場 テリーさんはどんな車に乗っているんですか?

テリー うーん、僕にとってのナンバーワンは、ホンダのビートかな。近田春夫さんが同じやつに乗っていたのを勧められてね、僕も買ったわけ。二人で第三京浜を走ったりしたのは良い思い出ですね。あとは、ワーゲンのビートル、これは1973年に販売されたカリフォルニアっぽいデザインの車ね。あとはイギリス車のモーガンもよく乗ってるかな。

堂場 好きな車に傾向が掴みづらいというか、乗りたい車に乗っているって感じなんですね。

テリー そうですね。買うときにひとつ決めていることがあって、「365日全て乗るということを考えない」ということ。

堂場 それは、つまりどういうことですか?

テリー たとえば冠婚葬祭でも使える車を選ぼうとすると、どうしても保守的になるじゃないですか。だから、僕は「365日のうち1日だけでもウケればいい」と思って選んでる。クリスマスに走るにはぴったりのデザインだ、みたいなね。

堂場 確かにそれはありますね。僕も以前、赤の車を購入しようとしたら、周りにすごく止められました。「それじゃあ葬式に使えないだろ?」って。結果的に、黒い車という、葬式にぴったりの車を買いましたよ(笑)。僕は、よく小説の中で車を出すんですね。それは、登場人物の性格を表しやすいから。スポーツマンですごく堅実そうなひとだったらレガシー、みたいなね。今の話を聞いていると、テリーさんを表す車を選ぶっていうのが難しいなと思いました。

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テリー ドライブはどこに行くことが多いですか?

堂場 正直、ドライブ自体はあまり行かないですね。もっぱら仕事に使うばかりで。ただ、首都高を走るのが好きなので、朝とか夜とか、意味もなく首都高を走っていることがあります(笑)。

テリー 首都高って怖いですよね? 僕、車は好きなんですけど、運転自体はあまりうまくないんです。だからスピードも全然出せないんだけど、そのせいで後ろが詰まったりね。僕はあくまで法定速度を守っているんだけど。

堂場 その問題はありますね。結局、運転しているひとによってスピードが違うから、事故や渋滞が起こる原因になってしまう。今回『犬の報酬』でもモチーフとなっている自動運転に対しては、そういった現状の課題の解決になるのではないだろうか、という話がよく言われています。テリーさんご自身は、自動運転の車に乗ったことはありますか?

テリー 以前雑誌の連載で試乗させていただきましたね。ただね、イメージと違いました。僕らって、どうしても「自動運転」と聞くと「寝てても目的地に連れて行ってくれるんじゃないか」って思っちゃうでしょ。でも実際は、ハンドルから3秒でも手を離したら警告音が鳴るんです。結局、「技術としてはまだまだなのかな?」というのが正直な感想でしたね。

堂場 確かにそうですね。メーカーによっては、もっと高度な技術が実現しているものもあるんですよ。今回僕が取材で乗ったのは、メルセデスのEクラスの最新モデルだったのですが、もっと自動運転らしくなっています。前を走る車を追尾して、放っておいてもカーブを曲がってくれる。すっごい気持ちはいいんですけど、まだちょっと怖いですね。結局ハンドルに手を伸ばしてしまって、ディーラーの人に「大丈夫ですよ」と何度も言われました(笑)。

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堂場 結局のところ、自動運転の車が広まっていくというのは、環境が整備されているかどうか、っていうのが問題なんですよね。まだまだそこがおっついていないという印象があります。

テリー 今回の最新刊では官僚がキーパーソンになってますが、僕は現実でも自動運転の普及というのは役人がやるべきだと思いますよ。というより、今回この本を読んで初めて、官僚が車の開発において大きな役割をもっているということを知ったんですけどね。

堂場 国にとって自動車産業ってすごく大きな産業ですからね。一番の輸出産業。だからこそ、昔のようにたくさんのメーカーが面白い車を作るような時代が来てくれたらいいのにな、という願いは密かにもっています。

テリー 本当にね。今回話した自動車産業なんかでいえば、パチンコ業界のような成形業で成り立っている業界は参入することができると思うんですよ。作ろうと思えば。自動車学校にも優秀な若手はたくさんいますしね、彼らが面白いビジュアルの車を作ってくれたら嬉しいな。

堂場 車って百何十年という歴史をもっているんですよね。これってもう文化といっていいんじゃないでしょうか。お金があれば若いひとに出資したいくらいですよ。さらに、もしそれで国との交渉の全てを明らかにして、こんなプレッシャーをかけられました、なんて起業家が出てきたら面白いなあって思っちゃいますね。

テリー もしかすると堂場さんの次の本はそれがテーマかもしれない。

堂場 3年後くらいにそのネタで新刊が出たら、今回の話がベースになっていたと思ってください(笑)。

取材・文=園田菜々

この記事で紹介した書籍ほか

犬の報酬

著:
出版社:
中央公論新社
発売日:
ISBN:
9784120049668