40人に3人いるのに、誰も知らなかった「発達性読み書き障害」の実体験漫画に注目!【前編】

出産・子育て

2017/7/18

『うちの子は字が書けない (発達性読み書き障害の息子がいます)』(ポプラ社)

 ここ数年、関連書籍やメディアの影響で発達障害に注目が集まっているが、まだまだ知られていない障害がある。40人のクラスに3人いるといわれている「発達性読み書き障害(発達性ディスレクシア)」もそのひとつだ。漫画家の千葉リョウコさんの長男・フユくんが、その診断を受けたのは小学6年生のときだった。誰もが読み書きを覚え始める成長期に、その障害を見極めるのは難しい。千葉さん親子はどのようにその障害と向きあってきたのだろうか? WEB連載で話題沸騰となった実体験漫画をまとめた『うちの子は字が書けない (発達性読み書き障害の息子がいます)』(ポプラ社)発売にあたり、話を伺った。

――「発達性読み書き障害」という言葉自体、日本ではあまり知られていないので、成長過程にある子どものその可能性に気づくのは、なかなか難しいですね。

千葉リョウコさん(以下、千葉) フユくんの場合、小学2年生から漢字がぐっと難しくなって、1ページ書くのに1時間以上かかるようになったんです。その頃からはっきりと、おかしいな?と感じはじめました。もともとマイペースで人との関わりが少し苦手だったり、こだわりが強いところがあったりしてグレーゾーンなのかな? と思っていて。字が書けないこともその特徴のひとつなのかな? と。ところが実際は「発達性読み書き障害」で、いざ調べようと思っても、当時は関連書籍が専門書しかなく、読んでも難しくて頭に入ってこなかったんです。そこで今回、そのことに特化した漫画を描きたい、と。

――40人に3人の割合で読み書き障害の子がいるということも、この本ではじめて知りました。

千葉 子どもの障害や療育のことをよく勉強しているお母さんからすると、「なんでもっと早く気がついてあげられなかったの?」と思われるかもしれないという不安はありました。でもきっと大半の人は、読み書き障害なんてまったく知らなくて、自分の子どもがそうだと言われても寝耳に水だと思います。この漫画が、その方たちの気づきのきっかけになればいいんじゃないかと思っています。

――最初に相談されたのは、専門医ではなく小学校の教頭先生だったんですね。

千葉 夏休みに学校に行ったら、たまたま教頭先生がいらしたので、ちょっと相談してみたんです。そしたら、「では発達の先生に診てもらいましょうか」と言われて、「そんな大事だったんだ!」と、そこではじめて事の重大さに気づきました。その後、各学校を巡回している発達の先生にフユくんを診ていただいたら、「通級(※)したほうがいいですね」と。ただ、通えるのは3年生の春からで、もし重篤な子が入ってきたら軽度な子は入れないということでした。結局、通級を週2回続けることになり、読み書き障害だとわかったのは6年生のとき。そのときはじめて、「発達性読み書き障害」という言葉を知りました。

(※)小学校や中学校の通常の学級に籍をおいて、比較的軽度な障害を有する児童に対して、その障害にあった特別な指導を行うクラス

――通級では字を書く練習を?

千葉 そうです。週2回ずっと字を書く練習をしていたんですが、やってもやっても書けませんでした。後で専門家の宇野彰先生(筑波大教授、LD・Dyslexiaセンター理事長)からアドバイスを受けたとき、通級での学習方法では書けるわけがなかったんだと気づきました。通級での練習方法は、文字をなぞったりする健常者向けの学習方法。けれどもフユくんは、「音」で覚えたほうが覚えやすいタイプだったんです。漢字をパーツごとに……例えば「花」であれば、カタカナの「サ」「イ」「ヒ」に分けて、そのパーツを使って『「花」が「サ」「イ」て「ヒ」ヒッと笑う』というように文章を作ったら覚えやすい……ということが様々な検査を経てわかりました。

 彼が通級で3年かけてもカタカナの半分ぐらいまでしか書けなかったのは、その子に合ったトレーニングをしなかったから。専門機関の先生にトレーニング方法を教えてもらったら、5ヶ月でカタカナとひらがながすべて書けるようになりました。そのように、正しいアドバイスやトレーニング方法を知る先生が、まだまだ少ないのが現状です。

――単に読み書きが苦手な場合と、読み書き障害の可能性を見分けるポイントはあるのでしょうか。

千葉 フユくんは小さい頃から絵本が大好きで、本も黙読だとスラスラ読めました。でも音読をさせると、飛ばし読みしたり勝手に文を変えて読んだりするんです。前後の文脈で自分勝手に想像して読んじゃったりする。それも読み書き障害の特徴です。特に字を書きはじめる年齢になると、書けないことが明らかにわかってきます。

 結局、フユくんは、発達性読み書き障害だとわかるまで3年ほどかかりましたが、原因がはっきりしてよかったですね。不安はありましたけど、それからどうしていくかは本人の意思を尊重して決めていこうと思いました。フユくんは、読み書き障害でも字が書けるようになりたいという気持ちが強かったので、私ができることはできるだけサポートしました。

――3人の子育てをしながら、フユくん用のカードをつくって字を書く練習をサポートするのは、大変だったと思いますが頑張りましたね。

千葉 それまであまり構ってあげられなかったので、カードぐらいつくってあげなければと(笑)。5年生ぐらいになると、学校の勉強自体が難しくなってきて、私にはもう教えられないと思ったのもあります。カードは本人と一緒につくるのが一番いいということだったので、私が絵を描いてフユくんが好きな言葉を入れてみたり、コミュニケーションができる時間が増えたのはよかったですね。朝5時に、一番下のチビだけ寝かせたまま、娘も一緒に起こしてみんなで勉強していました。

【後編】「発達性読み書き障害」でもトレーニング次第で受験は可能。しかし「障害者差別解消法」に取り組む学校は少ない!?

取材・文=樺山美夏