蒼井優、阿部サダヲのW主演! 伝説的作家の映画化第2弾はあざやかな「幕切れ」小説

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公開日:2017/10/9

『彼女がその名を知らない鳥たち』
沼田まほかる(幻冬舎文庫)

 僧侶、コンサルタントなどを経て56歳で遅咲き作家デビューを果たした、沼田まほかる。書くものすべて傑作。ただし2011年発表の第6作『ユリゴコロ』以降は新作が刊行されず、旧作を読み返すしか沼田ワールドを楽しむすべはなかったのだが、この秋から映像化作品を観る楽しみも加わった。吉高由里子主演の『ユリゴコロ』(9月公開)に続き、06年発表の長編第2作『彼女がその名を知らない鳥たち』が蒼井優主演で映画化。相手役となった阿部サダヲと共に、原作の持つ「壊れた」世界観を再現することに成功している。

 十和子(蒼井)は別れた男・黒崎(竹野内豊)のことを思いながら、同棲相手の陣治(阿部)を罵倒して暮らす。下品で、貧乏で、仕事のグチばかりで頼りない陣治と一緒にいる理由。切っても切れない二人の絆とは―。原作はミステリー作品としての巧みなトリックと共に、読めば脳裡に焼き付いて離れなくなる、あざやかな「幕切れ」で知られている。映画版では、プラスαの演出が施された。素晴らしい演技、演出、映画的魔法。堪能しました。

文=吉田大助

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『彼女がその名を知らない鳥たち』
原作:沼田まほかる(幻冬舎文庫) 監督:白石和彌 出演:蒼井 優、阿部サダヲほか 配給:クロックワークス 10月28日(土)新宿バルト9他全国公開