最愛の人の死には3億円の価値があった――“愛の証明”をめぐるラブストーリー『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』

文芸・カルチャー

2019/9/22

『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』(斜線堂有紀/KADOKAWA)

 新進気鋭の小説家・斜線堂有紀が手がけた『夏の終わりに君が死ねば完璧だったから』(KADOKAWA)が、2019年7月25日(木)に発売された。“最愛の人の死”をめぐって描かれる夏の物語に、「ぐうの音も出ないほど完璧なラブストーリーでただ泣いてます」「好きな人に“あなたが好きだ”と信じてもらうことの難しさを考えさせられる」「この作品を夏に読めてよかった」と絶賛の声が相次いでいる。

 本作の主人公・江都日向は、劣悪な家庭環境によって将来に希望を抱けずにいる少年。そんな彼の前に、体が金塊に変わる致死の病「金塊病」を患った女子大生・都村弥子が現れる。彼女は死後3億円で売れる“自分”の相続を江都に持ち掛けるのだが、2人の距離は徐々に縮まっていき―。

 相手が死ねば莫大な金銭が手に入る、という特殊な状況のもとで繰り広げられる“愛”の物語。ウェブマガジン「カドブン」に掲載された書評では、『恋する寄生虫』などの代表作をもつ小説家・三秋縋が本作のテーマについて紐解いていた。

 江都は弥子に純粋な恋をしているのかもしれない。しかし彼女の死によって大金が転がり込んでくるという状況によって、周囲からは“金目当て”の恋と捉えられてしまう。三秋によると、そこで主人公は「本当に愛があることを証明するにはどうすればいいのか。相続を放棄すればそれでいいのか。それはそれで被相続人の好意を無下にしてしまうことになるのではないか」という悩みに直面するのだという。

 愛の純粋さを問われるような極限状況で、2人は最終的にとある“正解”を選ぶ。その結末について、書評家のタニグチリウイチは「結末から浮かぶある推論。自分だったらそれで自分を納得させられるかに迷う。その人の存在はお金には換えられない? 死を経て得た価値を噛みしめたい? 江都の行動や弥子の考えを読み込み彼と彼女の至った境遇に近づこう」とTwitter上で語っていた。

 軽率には語れないテーマを扱った小説だが、キャラクターの魅力や文章の美しさも高く評価されている様子。ラノベ好きバーチャルYouTuberの本山らのは、自身のTwitterで「弥子さん魅力的すぎ…惚れちゃう」「心を刺すような美しいフレーズが沢山詰まっていて最高」とその魅力を熱弁している。

 1人の少年が愛する女性と迎える“最後の夏”。うだるような残暑にうってつけの1冊を、ぜひ手にとってみてほしい。

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