スティーヴン・キング「やられた、それも完膚なきまで」 半世紀にわたる麻薬戦争を描いたシリーズの完結作『ザ・ボーダー』

文芸・カルチャー

2019/10/5

『ザ・ボーダー』上巻(ドン・ウィンズロウ:著、田口俊樹:訳/ハーパーコリンズ・ジャパン)

 国境や法を超えて繰り広げられる麻薬戦争を描いた小説『ザ・ボーダー』(ハーパーコリンズ・ジャパン)。“クライムノベルの金字塔”として名高いシリーズの完結に、「50年に及ぶ物語の完結。ずっと読んでいたかった!」「まごうことなき傑作だと思います」と熱狂の声が上がっている。

 同作はアメリカ出身の作家、ドン・ウィンズロウが手がけるクライムノベル。2005年から刊行が始まった大人気シリーズの第3弾で、物語の完結が描かれた作品でもある。これまでシリーズでは麻薬撲滅に取り憑かれた捜査官のアート・ケラーを主人公として、米国政府や麻薬カルテル、マフィアなどの思惑が交錯する壮絶な戦いが展開されてきた。

 シリーズ第1作目の『犬の力』では、メキシコを主な舞台として麻薬カルテルとの約30年にも及ぶ戦争が勃発。圧倒的な生々しさで描写される陰謀や裏切り、暴力シーンの数々は多くの人の心を掴むことに。海外の様々な文学賞にノミネートされた他、日本でも2010年度「このミステリーがすごい!」海外編の第1位を獲得するほどの人気を博している。

 第2作『ザ・カルテル』でメキシコ麻薬王のアダン・バレーラと決着をつけたケラーだったが、今作『ザ・ボーダー』ではアダンの“息子たち”による熾烈な争いが勃発し、メキシコの平和が破られてしまう。そこで麻薬取締局の局長に就任したケラーは、またも麻薬カルテルとの戦いに挑んでいく。売人や警官、政財界のトップが交錯する“仁義なき戦い”が約1,600ページにわたって描かれる様子はまさに圧巻だ。

 単なるファンタジーではなく、実在する人物や事件を想起させるような描写によって麻薬戦争のリアリティを表現しているのも同作の魅力。読者からは「ここまで書いて大丈夫?というくらいリアルでハラハラした」「麻薬戦争の描写に現実味がありすぎて、まるでノンフィクションのよう」といった声が後を絶たない。

 またホラー小説の大家、スティーヴン・キングは「やられた、それも完膚なきまで。これ以上、熱く訴えかけてくるエンタテイメントがあっただろうか」と同作を絶賛。アメリカの大手新聞社「ニューヨーク・タイムズ」も、3部作について「まさに『ゴッドファーザー』と『戦争と平和』のハイブリット版だ」と評価している。

 超一級のエンタメ小説を通して、綺麗ごとでは済まない“現代社会の闇”と向き合ってみてはいかがだろうか。

『ザ・ボーダー』下巻(著:ドン・ウィンズロウ、訳:田口俊樹/ハーパーコリンズ・ジャパン)

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