中越典子「井上戯曲の最高峰であるこの舞台。その流れに乗り、そして流れを変えてもみたい」
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、女優の中越典子さん。井上ひさしの異色作にして最高傑作と呼び声高い舞台『藪原検校』で演じるのは、なまめかしく、激しい女“お市”。2月23日から上演される、その舞台を前に、今思うこととは――?
「この舞台のお話をいただいた時から、楽しみで、楽しみでしょうがなくて」
取材当日は、直前まで歌の稽古、「来週から本稽古に入ります」と、こぼれるような笑みを見せる中越さん。井上ひさしから絶大な信頼を寄せられ、幾度となく井上作品を手掛けてきた栗山民也が『藪原検校』を初演出したのは3年前のこと。大きな話題を呼んだ、その2012年版だが、記録映像は「あえて観ないようにしているんです」と言う。
「名女優・秋山菜津子さん演じるお市は絶対、素晴らしいに決まっている。けれどそのお市に囚われるのも、逆に全然違うお市を、と自分が気張ってしまうのも嫌で。舞台における時代劇ではほとんど無地に近い私が、ここに呼んでいただけた。そこにある意図を真摯に受け…