引っ越し先の隣人が推しにそっくりだった!? 吸血鬼女子×毒舌イケメンのブラッディ・ラブコメ開幕

マンガ

公開日:2023/4/10

推しに甘噛み
推しに甘噛み』(鈴木ジュリエッタ/白泉社)

 推しへの思いというのは、時として人の行動力を一気に押し上げ、思わぬ方向へ突き動かす。推しの力というのは絶大だ。それは人間に限ったことではなく、吸血鬼も同じ――かもしれない。『推しに甘噛み』(鈴木ジュリエッタ/白泉社)は、引きこもりな吸血鬼という主人公がオタ活のために日本へ移住し、そこで運命の出会いを果たす現代ファンタジーラブコメだ。


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 本作の主人公は、30年間引きこもっていた吸血鬼の女の子・ヒナ。アニメ『ヴァンパイア♰クロス』に登場するキャラクター・竜須崎マオにどっぷりハマり、「もっとマオ君のこと知りたい!」とあっという間に日本へ移住。引きこもりから脱却し、マンションでひとり暮らしを始めたのだった。こうしてヒナがオタ活をエンジョイしていたある日、偶然マンションの隣人に遭遇する。不思議な甘い香りを漂わせるその男性は、なんと竜須崎マオにそっくり!

推しに甘噛み

推しに甘噛み

 ヒナは驚き、その隣人に思わず声をかける。が、その男・甘夏玖太(あまなつ きゅうた)は、ヒナを「クソアニメオタク」呼ばわりするとんでもなく失礼な男だった。玖太のあまりに失礼な対応に、いっときは「もう二度と口きかない――!!」と心に決めたヒナだったが、その決意は、「ヴァンパイア♰クロス」コラボカフェに同行予定だった知人にドタキャンされ崩れ去る。ヒナは吸血鬼で、普通の食べ物は食べられない。そのため同行者が必要だったのだ。

推しに甘噛み

推しに甘噛み

 こうしてヒナと玖太は、不本意な形で少しずつ距離を縮めていく。竜須崎マオとのコラボメニューを一目見たいという理由で、隣に住んでいるだけの、しかも悪印象である玖太を「パンケーキ食べに行きませんかっ」と誘うのだからすごい。しかも自分はパンケーキを食べず、玖太に押しつけてそそくさと缶バッジを購入しに向かうのだ。もう、完全に推し=竜須崎マオしか見えていない。

 この段階では、ヒナは玖太に対し、吸血鬼であることを隠しているわけだが、玖太もまた、ヒナに隠していることがあった。なんと彼、別の吸血鬼に血の味を気に入られて付きまとわれていたのだ。そして、ヒナと玖太が2人で出かけたある満月の夜、ヒナはその吸血鬼に命を狙われてしまう。だがここでヒナは、ただのオタクではない、“特異な吸血鬼”としての顔を見せる――。

 普段はどこまでいっても推しの竜須崎マオしか見えていない、ほんわかマイペースなオタク女子であるヒナ。そんなヒナが見せた吸血鬼としての顔に、読んでいるこちらまでゾクッとさせられる。ただ、それもほんの一瞬。気がつけば、またいつもどおりのヒナに戻っている。玖太はそんな彼女を見て、「こいつはちゃんとクソアニメオタクだ」と表情を緩ませる。

 だが、推しに真っ直ぐでピュアなヒナは一筋縄ではいかず、口は悪いが人を放っておけない玖太を振り回し、イラつかせてしまうことも。さらに玖太は玖太で、世界中の吸血鬼を魅了する血を持っていて、次から次へと吸血鬼に狙われていく。ヒナはそんな玖太を守りながらも、自身は人の血は吸わないと徹底して血液パック派を貫いているが、それでも彼のことを「甘い匂いがする」と気にはしていて――。この絶妙な距離感や障害に、読めば読むほど目が離せなくなってしまう。

 ただのオタク女子と毒舌イケメン、ではなく、吸血鬼と人間が入り混じる世界だからこそのトラブルや事件が起こるのも、本作の大きな魅力のひとつ。1巻ラストでは、ヒナの実家から執事もやってきて、今後ますます波乱が巻き起こる予感! ヒナと玖太はどうなっていくのか、今後どんな展開が待ち受けているのか、執事はどう動くのか――引き続き注目していきたい。

文=月乃雫

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