第一印象に頼るのは危険!? 知らないと詰む人間関係の真実とは?

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更新日:2023/7/7

残酷すぎる人間法則
残酷すぎる人間法則』(エリック・バーカー:著、橘玲:監訳、竹中てる実:訳/飛鳥新社)

 人生で真に重要なものはたったひとつ「他者との関係」である。大ベストセラー『残酷すぎる成功法則』の続編、最新刊『残酷すぎる人間法則』(エリック・バーカー:著、橘玲:監訳、竹中てる実:訳/飛鳥新社)は、そう強く言い切る。

 本書のねらいは「友情」や「愛情」などが取り巻く、私たちの人間関係の誤解を解くことにある。タイトルに「残酷すぎる」とあるが、そのイメージとは裏腹に人間愛がにじむ。ポストコロナとなり、対面の大切さを再び噛み締めつつある今こそ読むべき1冊である。

第一印象だけに頼るのは危険! ひと呼吸置いて「心理的距離」をとる

 第一印象の大切さは、たしかにある。よくいわれる「見た目」もしかりだが、それだけに頼るのは危険だ。例えば、相手と「そりが合わない」というのは本当か。初対面で「信用できない」と思い込み、自ら関係性をこじらせてしまった可能性もある。

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 本書は、第一印象の精度は「七〇%近く」で、残り「三〇%」は不正確だと指摘する。ではなぜ、私たちは思い込みで判断してしまうのか。背景には、思い込んだ部分のみに目を向けてしまう「確証バイアス」の存在があるという。自分の信念と一致する情報ばかり好んで探してしまう傾向があるのだとか。

 確証バイアスは、私たちの「脳」を苦しめるやっかいな存在だ。しかし、乗り越える手段はある。

 例えば、初対面の相手を「判断する前に距離を取る」のはひとつだ。本書では、対象と「心理的距離を取ることによって、より合理的で客観的な判断が可能になる」と示した心理学の調査を紹介しており、相手を「正確に評価」するために必須のスキルだと主張している。

 相手の身なりなど、分かりやすい情報だけで判断しないスキルは、詐欺被害などを回避する術にもなるという。確証バイアスを取っ払い、相手の本質と向き合う生き方はやはり必要といえるだろう。

相手と親密になりたければ「時間」をかけて「弱さ」を見せるべき

 実業家・カーネギーの大ベストセラー『人を動かす』は、多くのビジネスパーソンにとってのバイブルである。しかし本書は、この本のある間違いを指摘する。

 カーネギーが推奨したのは「人の話を聞くこと、相手に興味を持つこと、相手の立場に立って話すこと、心から褒めること、相手との類似性を探すこと、衝突を避けることなど、当たり前のようでいて、誰もが日常的に忘れていること」だが、そのうちのひとつ「相手の立場に立って話す」のは問題だという。

 理由は「人の心を読む私たちの能力」が、えてして「お粗末」だからだ。加えて、カーネギーの手法は「人間関係の初期段階」ではためになるとする一方、ともすれば「詐欺師にとって格好の作戦」になる場合もあり、いずれにせよ「浅い友情」のまま付き合い続ける羽目にもなると示唆している。

 では、真に相手と親密になるために何が必要か。シンプルに「時間をかける」必要がある。希少な時間を費やせば相手から「特別」な存在だと認識してもらえる可能性が高まり、本書では「軽い友情を育むのに六〇時間、『本格的な友人』になるには一〇〇時間、そして自慢の『親友』になるには二〇〇時間以上」と導かれた実験も紹介されている。

 そして、相手に「弱さ」をさらけ出すのも大事だ。弱さを出すと「嘲笑されたり、拒絶されたり」してしまうと恐れ、つい「完璧」な自分を演じてしまうかもしれない。しかし、相手の信頼を得たいなら「相手に弱みを握られ、つけこまれる危険を冒すこと」もいとわず、「自己開示」をするのが重要だと伝える。

 本書では、これらのほか「結婚の幸福はどのぐらい続くのか?」「オンラインのつながりはリアルのつながりより人を幸せにする?」など、鋭い視点から人間関係の「問い」と向き合っている。誰もが抱えうる人間関係の悩みを、ロジカルに解消してくれる本書は強い心の支えになる。

文=カネコシュウヘイ

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