「男子を落とすのに必要なのは『愛嬌』『気配り』そして『料理』!!」筋肉少女・奏さんの“闘魂（じょしりょく）注入”が人類を救う!?

　今日、理不尽な上司に叱責された人、尊敬できない教師に説教されたきみ、倦怠期の恋人にないがしろにされてしまったそこのあなた。そのとき、きっと思ったでしょう──「あいつ……ぶん殴りてえ……」と。しかし悲しいかな、現実に拳を繰り出すことは、なかなかに困難です。そこで、物語の中だけでも、爽快にぶん殴ってもらいましょう。『魔法少女殲滅兵器 筋肉少女』（たま虫あっとに/白泉社）に!!

　29世紀──人類は、謎の外来生命体“魔法少女”による迫害を受けていた。圧倒的な魔法の力で“人間狩り”に興じる魔法少女たちの前に、人類は滅びのときを待つばかりかと思われた……が、そんな魔法少女たちのあいだでは、妙な噂が流れていた。自分たちが人間狩りを楽しむ地域、すなわち人類の居住地に、「変なの」が出没するという。

　魔法少女たちの前に現れた「変なの」の正体は、筋骨隆々、聳え立つ山のような体躯の、自称“悩める女子の味方”──ミサイル以上の筋力で魔法少女を張り倒す、筋肉少女の奏（かなで）さんだった！

　奏さんに助けられた少女・さやかは、とある事情から打倒魔法少女を目論んでいた。奏さんの圧倒的な力（筋力）を目にしたさやかは、奏さんに「弟子にしてほしい」と頼みこむ。ここで通常のヒーローならば、なんやかやと理由をつけて弟子入りを断り孤高のポーズを決めるところだが、筋肉少女・奏さんは、そんじょそこらのヒーローとはひと味違う。こころよくさやかを弟子に取り、教えを授けてくれるのだ。「必要なのは『愛嬌』『気配り』そして『料理』」。女子力を極めた奏さんの奥義は、さやかの求める「魔法少女の倒し方」ではなく、「男子の落とし方」だった!!

　そうこうしているあいだに目的を果たしたさやかは、あらためて奏さんの力（というか筋力）を認め、再度弟子入りを志願する。奏さんほど女子力の高い人ならば、もちろん断るはずもない。こうして奏さんとさやかは、今日も悩める女子を救うため、魔法少女討伐に励むのだが、魔法少女たちの中には「魔法少女殲滅兵器・筋肉少女」を支配下に置こうとする動きもあり……？

　奏さんは強い。いや、筋力もヤバいが、心が強い。体格がちょっと規格外で観覧車に乗れなくても、ショックを受けて体が石になってしまっても、最終的にはなんとかしてしまうのだ（筋力で）。彼女を突き動かすその原動力はなんなのか？ それはやはり、奏さんが「悩める女子の味方」だからだろう。悩める女子がいる限り、奏さんはブレることなく、魔法少女を殴り、どつき上げ、張り飛ばし、闘魂（じょしりょく）を注入し続ける。おそらく彼女の考える「悩める女子」には、魔法少女たちも含まれているのだ。そう、傷つけ合うことを厭わず、「アンタのためを思って言うよ!?」とばかりにぶつかっていく──それこそが、本物の闘い（じょしトーク）なのだから。

　言いたいことも言えないもやもやを、あなたのかわりに圧倒的な筋力と女子力で殴り飛ばしてくれる爽快な主人公がここに誕生。うっかり上司や教師を殴り飛ばしてしまうその前に、ぜひとも読んでみてください。

文＝三田ゆき