赤楚衛二主演『こっち向いてよ向井くん』原作も面白い。男女の恋愛観の差を間違い探しできる新感覚恋愛マンガ

マンガ

公開日:2023/6/2

こっち向いてよ向井くん
こっち向いてよ向井くん』(ねむようこ/祥伝社)

 大人の恋ってなんでしょう? 経験を積み重ねてきたからこそ、相手の一挙手一投足に振り回されない、気持ちにゆとりを持てるようになった恋? 金銭的余裕も出てきていろんなことを楽しめるようになった恋? 経験を積み重ねてきたからこそ、“好き”という気持ちだけで突っ走れなくなった恋? 「結婚するなら次に付き合う人と…」と思うからこそ、踏み出せない恋?

こっち向いてよ向井くん』(ねむようこ/祥伝社)は、恋を休んで気づけば10年。もはや踏み出し方がわからない向井くんが、新たな恋の予感?に右往左往する物語です。

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恋ってなに? 向井くんの恋愛間違い探し

 主人公の向井くんは、10年前に振られた元カノのことを何かにつけては思い出す35歳。その後10年、恋愛市場から遠ざかり気味の毎日を送っていました。しかしそんな向井くんの前に現れたのが、派遣社員の中谷さん。帰り道たまたま一緒になって、ご飯を食べに行ったふたり。その後中谷さんは大勢でのご飯の誘いにも「向井さんが行くなら」と言うなど、何かと向井くんを頼りにする素振りを見せます。そんな中谷さんを見て、「自分に気があるのでは?」とそわそわする向井くん。しかし実は中谷さんは……!?

 向井くんからの視点で描かれた後、同じ出来事が中谷さんからの視点で描かれるのが本作の面白いところのひとつ。『恋愛間違い探しスタート!』というキャッチコピーにあるように、中谷さんは向井くんが思っていたことと全然違うことを感じていたことが続々判明します。「男女の恋愛観のズレが描かれる」と本作はよく紹介されていますが、恋愛経験の少ない私は「ひえぇぇー!」と向井くん視点で読んでしまいました。あなたはどう感じるでしょうか?

大人の人生を濃密に描く、ねむようこさんの作品

 婚約者が他の人と恋に落ち、人生のどん底に突き落とされた主人公の上京物語『トラップホール』。ブラック企業に入社してしまった新入社員が多忙ゆえに浮気され、それでも仕事のやりがいと新しい恋に出会う『午前3時の無法地帯』。突然大学を辞めて地元に帰ってきた主人公が、祖母の家を買い取ることから始まる『ボンクラボンボンハウス』。ねむようこさんの作品には、酸いも甘いも噛み分けた大人の恋愛だけでなく、自分の人生が固まっていくことへの不安、逆に、安定していたはずの人生が突然音を立てて崩れていった時のショックや、そこから這い上がる力強さなど大人の人生のドラマが詰まっています。『こっち向いてよ向井くん』でも、結婚の予定を聞かれた大学の同級生が、

「『結婚』経由のバスから降りたってカンジ」

 と返すなど、これまでの自分の人生と今後の不安をバスにたとえて話す印象的なシーンが。同世代の共感が詰まったマンガです。

7月、日本テレビ系でドラマもスタート!

 本作は赤楚衛二さん主演で、7月から日本テレビ系水曜ドラマとしてスタート。「好きって何だっけ?」「恋愛ってどうするんだっけ?」そんな恋愛迷子の向井くんを、赤楚さんがどう演じるのか。楽しみです!

文=原智香

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