「えっ、これだけでいいの?」こねずに完成するバゲット生地も。本場パリで修業したパン職人が教える、4つの生地から焼けるプロ級パン52品!

暮らし

公開日:2023/6/7

フランス仕込みのパン
フランス仕込みのパン』(大野友里奈/KADOKAWA)

 パン作りはこねるのに力が必要で、発酵状態の見極めもあって、少しハードルを高く感じる人も多いよう。また、一度作業を始めたら、焼き上げまでの数時間は、途中で出かけるのも厳しい。

 そんなイメージを覆し、誰でも簡単にできる作業工程で本格的なパン作りを提案するのが、本書『フランス仕込みのパン』(大野友里奈/KADOKAWA)。

「バゲット」「カンパーニュ」「ヴィエノワ」「クロワッサン」という、4つの基本生地から焼く52種類のパンレシピを紹介している。

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 著者は、国内の大手パンメーカーで製パンの技術を習得した後、フランス・パリに渡り、バゲットコンクール入賞店で修業したパン職人の大野友里奈さん。

 ハード系パンの基本とフランスの食文化を学び、その経験をもとに、現在はYouTubeとインスタグラムで「自宅でできるパン作り」を発信している。

フランス人は早起きが苦手!?

 フランスのパン屋では早朝から生地を仕込むことは、ほぼない。

 前日に生地をミキシングして長時間低温熟成発酵させ、それを当日に成形して焼くのが一般的。熟成させることで小麦本来のうまみを感じられ、おいしさ&作業効率の両方にメリットがある。

 家庭のパン作りにもそれを応用して、もっと簡単にと提案しているのが、1章の「こねないバゲット生地」と2章の「こねないカンパーニュ生地」だ。

家庭のパン作りにもそれを応用して、もっと簡単にと提案
「こねないバゲット生地」と「こねないカンパーニュ生地」

 ふたつきの保存容器に材料を入れて混ぜ、容器の中で何度か折りたたむ。

 途中、20分ほど生地を室温で休ませたりはするが、こねずに済むので力がいらないのがうれしい。

 あとはふたをして、冷蔵庫で12時間おくだけで、生地が完成する。

「えっ、これだけでいいの?」

 手ごねパンに挑戦したことのある人は拍子抜けするくらいの簡単さ。

 これなら毎日でも焼けちゃうぞ! とテンションが上がる。

 生地は最長18時間保存できるので、焼くタイミングも自分のライフスタイルに合わせられる。

 パン職人ならではの提案は、ほかにも。

 パン屋には毎日多くの種類のパンが並ぶが、共通する基本生地をベースに、成形の工程で味や形に変化をつけてバリエーションを広げているそう。

 100種類を100通りの方法で作っていたら、寝る間もなくなるから納得だ。

 本書でも基本の生地をマスターしたら、さまざまなパンに挑戦できるよう、アレンジが豊富に紹介されている。日本のパン屋では見かけない、フランスならではのパンもあってそそられる。

 パン作りがますます楽しくなること、間違いなし!

 下記の8種類のパンは、すべて「基本のバゲット生地」で焼ける。

左から、バゲット、クーロンヌぼるトレーズ、タバチュール、ダッチブレッド、プチフランス2種(オートミール、キヌア)
左から、バゲット、クーロンヌボルドレーズ、タバチュール、ダッチブレッド、プチフランス2種(オートミール、キヌア)
ベーコンフランス
ベーコンフランス
パン・オ・フリュイ
パン・オ・フリュイ

 フランス仕込みといえば、欠かせないのが「クロワッサン」。

 こちらは4章で紹介されている。

 バターを折り込む作業があり中級~上級者向きの内容だが、家庭で作りやすいレシピに落とし込まれていて、全行程プロセス&パン職人ならではの丁寧な解説つきだから安心だ。

 こちらも基本の生地をマスターすれば、下記のほかクインーアマンやペストリーなども焼ける。

左から、パルミエ、クロッカン、クロワッサン・オ・ダマンド
左から、パルミエ、クロッカン、クロワッサン・オ・ダマンド

 本書では、見ているだけで自分がフランスの街角のパン屋にいるような気分に。

 基本の4つの生地はビギナーから上級者まで楽しめる内容で、しかもバリエーションが豊富だから、ページをめくるたびに、焼きたいパンが次々と出てきてワクワクがとまらない。

「おうちパン」の楽しさ・奥深さに魅了され、パン作りの沼にどっぷりハマりそうな1冊だ。

文=安井万季子 撮影=福尾美雪

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