「涙がでるのはきみが弱いからではない。強いからだ」世界で800万人の心を動かした、アカデミー賞受賞の傑作アニメが絵本に!

文芸・カルチャー

公開日:2023/7/9

ぼく モグラ キツネ 馬 アニメーション・ストーリー
ぼく モグラ キツネ 馬 アニメーション・ストーリー』(チャーリー・マッケジー/飛鳥新社)
 多分、自分のことは一番自分が認めてあげないといけない。だけれども、誰にだって自分自身が嫌で嫌でたまらない日があるだろう。そんな時に、そっとあなたを包み込んでくれる物語——それが『ぼく モグラ キツネ 馬 アニメーション・ストーリー』(チャーリー・マッケジー/飛鳥新社)だ。「ノンストップ!」(フジテレビ系)で紹介され際には、スタジオでも大きな反響が。お笑いタレントの虻川美穂子さんがスタジオで涙ぐむほどだった。

 男の子とモグラ、キツネ、馬の冒険と心の交流を描き出したこの本は、アカデミー賞で最優秀短編アニメ映画賞を受賞したアニメーションを絵本化したもの。原作『ぼく モグラ キツネ 馬』(チャーリー・マッケジー/飛鳥新社)は、イギリスではハリー・ポッターシリーズに次ぐ史上2番目に売れたハードカバー本で、世界では800万部、日本版も24万部を突破。心に刺さる台詞とイラストが世界中の人々を癒し続けている話題のアート絵本だ。

 その作品が100人あまりのアニメーターによってアニメ化され、再び絵本として生まれ変わった。原作同様、翻訳を担当したのは『世界から猫が消えたなら』(小学館)など、数多くの人気作品を生み出している作家・川村元気氏。原作も美しい絵本だが、この作品にはまた違った美しさがある。原作は、躍動感のある線画と淡い水彩が印象的だ。一方、アニメ版の絵本は、原作を読んで膨らませていた想像が具現化したかのよう。ページをめくれば、色鮮やかな世界に包み込まれる。アニメーションの名場面が切り取られ、そこには原作同様、涙が出るほど心に沁みる台詞が手書き文字で添えられている。ここは、雪深い森の中。男の子と動物たちとともに、物語の世界に迷い込んだような錯覚を覚えてしまう。

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 いつしか迷子になり、ひとりぼっちでいた男の子。男の子の目の前に現れたのは、1匹のモグラだった。ふたりはたくさんおしゃべりをし、川をたどって、一緒におうちを目指すことに。その夜には、疑り深いキツネと出会い、翌日には、おだやかな馬とも出会う。彼らはともに語らいながら、冒険へと出かけていく。

ぼく モグラ キツネ 馬 アニメーション・ストーリー

 森はおそろしいけれど、美しい。まるで、人生のようだ。雄大な自然の中をさまよう男の子と動物たち。登場するキャラクターすべてが愛おしく、彼らのことが大切な仲間のように思えてくる。次第に紡がれていく友情がなんと温かいことか。そして、彼らの会話には心が洗われる。

“涙がでるのはきみが弱いからではない。強いからだ”

“たすけを求めることは、あきらめるのとはちがう”
馬はいった。
“あきらめないために、そうするんだ”

 力強い言葉の数々は、傷ついた私たちの涙を誘う。そうか、泣いてもいいんだ。助けを求めることは悪いことではないのか、と心に響いた。ありのままの自分をもっと好きになってあげてもいいのかもしれない。この旅の中で、男の子も、動物たちも少しずつ成長していくが、それと同じように、私たちも、彼らと一緒に森の中をさまよううちに、だんだんと前を向けるようになっていくことだろう。

 8歳の子どもであろうと、80歳の大人であろうと、この本は、どの年代の人にとっても、宝物のような1冊になるに違いない。この物語には人生のすべてが詰まっている。心が疲れ、自分に自信が持てない時に、何度でも読み直したい。読めば、心が癒され、浄化されていく。鮮やかなカラーイラストで綴られたもうひとつの『ぼく モグラ キツネ 馬』。原作同様、このアニメ絵本は、またもや世界中を席巻するだろう。

文=アサトーミナミ

◆『ぼく モグラ キツネ 馬』アニメーション予告動画

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