老犬への愛情に涙が止まらない…。“愛犬がかわいい理由”を調査した小学2年生の自由研究から誕生した絵本『ぼくのいぬはどうしてこんなにかわいいのか』

文芸・カルチャー

公開日:2023/7/12

ぼくのいぬはどうしてこんなにかわいいのか
ぼくのいぬはどうしてこんなにかわいいのか』(しゅん:著、えがしらみちこ:絵/KADOKAWA)

「年老いて病気になったから」「治療費がかさむようになったから」という身勝手な理由で近年、増えているのが、老犬の遺棄。人間と同じように動物も年を重ねるのに、穏やかな老後を過ごせない犬が、この社会にはたくさんいる。

 そんな悲しい風潮がある時代だからこそ、心に響くのが、シニアの愛犬と暮らす男の子の深い愛情にホロっとさせられる、絵本『ぼくのいぬはどうしてこんなにかわいいのか』(しゅん:著、えがしらみちこ:絵/KADOKAWA)だ。

 実は本作、誕生した経緯にも深い犬愛がある。なんと、作者しゅんくんが夏休みに行った自由研究を書籍化したものなのだ。

advertisement

 2022年、しゅんくんは、いつもお世話をしている柴犬のおばあちゃん・チャコちゃん(当時15歳)の生態や、かわいく思える理由に疑問を抱き、調査を開始。その微笑ましい自由研究はSNSで大きな話題となり、今回の書籍化に至った。

小学2年生の男児が自由研究で調査した“愛犬がかわいい理由”

 しゅんくんとチャコちゃんの絆は、深い。チャコちゃんは赤ちゃんだったしゅんくんを寝かしつけたこともあり、ふたりはいつも一緒に楽しい時間を過ごしてきた。

チャコも、わたしをしらべてほしいってかおを、していたから。

 そんな子どもらしい、かわいい理由も挙げながら、しゅんくんは自分を大好きでいてくれるチャコちゃんの秘密を調べることにした。

ぼくのいぬはどうしてこんなにかわいいのか

 しゅんくんには、4つの疑問があったよう。なぜ、チャコちゃんの鼻は黒いのか。どうして昼寝はするのに、夜はなかなか寝ないのか。なんで、赤ちゃんみたいに甘えてきたり、ピラニアのように暴れたりするんだろう。そして、なんで、こんなにもかわいいのか――。

 そこで、しゅんくんはチャコちゃんを毎日観察し、インターネットで情報を調べ、謎の解明に大奮闘。図書館で犬の本を借りて読んだり、動物病院で獣医師に話を聞いたりもした。

 すると、これまで知らなかったチャコちゃんの秘密が明らかに。鼻が黒いのは太陽から皮膚を守るためで、夜になかなか寝ないのは何度も水を飲みに起きていたからだと知った。

ぼくのいぬはどうしてこんなにかわいいのか

 また、シニアになったことで体に変化が現れ、できないことが増えてきたチャコちゃんのもどかしさにも気づいたよう。

ぼくのいぬはどうしてこんなにかわいいのか

 自由研究を通して、しゅんくんは大切な家族であるチャコちゃんの体や心を、これまで以上に理解していったのだ。

 そして、一番の疑問だった、チャコちゃんがこんなにもかわいい理由にも、しゅんくんは自分なりの答えを見つける。しゅんくんが辿り着いた結論はとても微笑ましく、チャコちゃんをまっすぐに思う気持ちが伝わってきて、世の大人は涙してしまう。

 長年そばに寄り添ってくれているペットが老い、病気になった時、自分はその現実をどう受け止め、向き合うか…。しゅんくんの優しい自由研究に触れると、そんな考えが頭に浮かび、ペットへの想いが募っていく。

 また、本作のラストには読者とチャコちゃんに対する、しゅんくんの直筆お礼メッセージが掲載されており、その文章が、また泣ける。小さな子どもから命の大切さを教えられ、動物との向き合い方を見つめ直せるのが、本作の良さなのだ。

 ぜひ、ペットと暮らしている方だけでなく、これから動物を迎えようと思っている方にも手に取ってほしい。老いた動物の命が軽視されている今だからこそ、多くの人に届いてほしい作品だ。

文=古川諭香

◆書誌情報『ぼくのいぬはどうしてこんなにかわいいのか』(KADOKAWA)
https://yomeruba.com/product/ehon/322212000519.html

あわせて読みたい