「家電×学園ラブコメ×猫×SF」の世界が癖になる! 猫の姿の宇宙人が、知識のために身近な家電を分解しまくるギャグマンガ

マンガ

PR更新日:2023/12/8

宇宙人ムームー
宇宙人ムームー』(宮下裕樹/少年画報社)

 笑いながら読んでいるだけで、家電の知識が身につく。『宇宙人ムームー』(宮下裕樹/少年画報社)は、そんな不思議な魅力を持ったギャグSFコミックだ。

 本作はギャグSFと家電の知識、学園ラブコメといった本来なら決して交わらないであろう要素を上手く掛け合わせ、独自の世界観を作り上げている。

 高度な文明を築き上げたものの、内紛によってインテリ層と母星を失った宇宙人ムームー。母星の超文明を復活させるため、ほどよく文明レベルが低い地球でテクノロジーを学び直すことにした。

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「地球を支配し、勢力を持っているのは猫だ」なぜか、そう勘違いしたムームーは猫の見た目になり、地球へ。宇宙船で突っ込んだ内気な女子大生・桜子の家で暮らしながら日々、家電の研究に励む。

 ムームーによれば、テクノロジー再生計画のリミットは1年間。失敗すれば、ムームーの同胞が地球を新天地として占領してしまうという。

 そうした事態を避けるため、ムームーはありとあらゆる家電を分解し、仕組みを学習。掃除機、電子レンジ、冷蔵庫など身近な家電に興味を示し、ムームーは桜子の協力を得ながらテクノロジーの知識を吸収していく。

 その過程では身近な家電の仕組みが詳しく解説されており、タメになる。例えば、意外と知らない紙パック式掃除機の中身は水のろ過装置と似ているそう。気流に乗って吸い込んだ汚れを紙パックとフィルターでこしているのだ。

宇宙人ムームー

 掃除機はほとんど風を造るだけの機械で、ハウスダストや花粉が取れる機能は、中のフィルターや紙パックの目の細かさによるもの。だが、あまり細かい目だと吸引力の低下に繋がるのだという。

 こうした知識の合間にはムームーたちが繰り広げるギャグもたっぷりと盛り込まれているので、家電マニアはもちろん、機械に明るくない方も楽しみながら知識を得ることができる。時折、描かれる桜子とムームーの交流にほっこりさせられもするだろう。

宇宙人ムームー

宇宙人ムームー

宇宙人ムームー

 人付き合いが苦手で同級生と上手く関係を築けなかった桜子はムームーとの出会いにより、日常が変化。家電の知識を得てムームーの力になりたいとの思いから、家電の修理を請け負う大学内のサークル「人類再生研究会」に入会。それを機に、機械をこよなく愛す部長や、ひそかに好意を抱いていた同級生のアキヒロなど、周囲の人々と交流を持つようになっていく。

宇宙人ムームー

宇宙人ムームー

 そうした学園ストーリーの中にはラブコメ要素も盛り込まれていて、キュンとさせられる。桜子は、イケメンで天然の人たらしである一方、水没したスマホを電子レンジで乾かそうとするほど機械音痴のアキヒロと徐々に距離を縮め、いいムードに。

宇宙人ムームー

宇宙人ムームー

宇宙人ムームー

 一方、無機物しか愛せないと思われている機械マニアの部長は学園のミスコン優勝者に恋をしており、彼女が感じた些細な悩みを家電の知識を使って解決しようと大奮闘する。タメになる知識だけでなく、こうした初々しいラブコメの先が知りたくなるのも、本作の面白さなのだ。

 本作には他にも、アキヒロに恋をし、桜子をライバル視する家電に詳しい女子大生・鮫洲さんや警視庁に勤めながらムームーたち宇宙人の動向を見守る穴守さんなど、個性豊かなキャラクターが続々と登場。彼らがどう関わり合い、コミカルなドタバタ劇を繰り広げるのかもチェックしてほしい。

 また、本作は巻を進めるごとにストーリーが壮大になっていくため、見ごたえがある。例えば、アキヒロと暮らしている猫がムームーの同胞であることが分かったり、保守派であるムームーと敵対する急進派が地球に攻めてきたりと、先の展開にハラハラドキドキさせられる回も。小出しで知れるムームーの過去も気になり、次の巻につい手が伸びてしまうのだ。

 この唯一無二のSF漫画は一体、どんな結末に辿り着くのだろうか…。そんなワクワクを抱きながら、ぜひ本作を楽しんでほしい。

文=古川諭香

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