悩んでいる子どもの声を引き出すきっかけにも! 感情の整理や言語化がむずかしい子に寄り添い、コミュニケーション能力を高める絵本

文芸・カルチャー

公開日:2023/11/8

いまの きもちは どんないろ?
いまの きもちは どんないろ?』(えがしらみちこ/KADOKAWA)

 子どもって、朝は機嫌が良かったのに急に不機嫌になったり、腹痛を訴えたりすることが…。何かあったのかと心配になり、聞き出そうとするのですが、「うーん」と黙ってしまったり、「よくわかんない」と言われてしまったり。放っておくと、心の声を溜め込み、行きしぶりになることも…。こんな時、どうしたらいいのでしょうか。

 絵本作家・えがしらみちこさんの新作絵本『いまの きもちは どんないろ?』(KADOKAWA)は、感情を整理し、言葉にして伝えるのがむずかしい子どもに寄り添う一冊。色や音、体の感じ方などで子どもの気持ちを引き出し、コミュニケーションを取るきっかけを作ってくれます。

 2学期に入って席替えをしてから、少しナーバスになっている小学1年生の息子といっしょに読んでみました。

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いまの きもちは どんないろ?

 本書では、自分の気持ちを言葉で伝えられなくても、色や音で近いものを表現することができます。ちなみに息子が今の気持ちを重ねたのは、黄色でした。

 また、「ゆったりしたり、何かに夢中になった時、心の中は何色だった?」とたずねるページでも、彼は黄色を選びました。さっき選んだ黄色は、彼にとって「ゆったりした気持ち」だったのかもしれません。寝る前の読み聞かせは親子のとっておきタイムなので、リラックスしていたのかも…と想像することができました。

いまの きもちは どんないろ?

 一方で、つらい気持ちも抱えているようです。「喉の奥がぎゅーってしたり、ぐっと力が入るくらい我慢しちゃったことはあった?」とたずねるページで、「隣の席のお友達が僕の絵をかっこよくないと言ったこと」と教えてくれました。親がどれだけ想像しても出てこないような悩みに、ハッとしました。

 いつもなら「何があったの?」と漠然と聞くだけですが、このページにはモヤモヤした時の体の感じ方やイメージが描かれていたので、自分の気持ちを想像しやすかったのかもしれません。物語の流れに乗って、自然なかたちで会話ができたのも、話しやすかったのだと感じています。

 子どもの選んだ色がどんな気持ちを指しているのか、明確な答えが書かれているわけではありませんが、コミュニケーションをきっかけに、子どもが抱える悩みや葛藤を明らかにするためのヒントを見つけることができます。本書を読みながらの会話が、子どもの気持ちを聞き出すための鍵になるのです。

いまの きもちは どんないろ?

 同じことをしていても感じ方が違うことや、違うからこそ、気持ちを伝えることで嬉しさや不安を分かち合えることの大切さについても、触れられています。

 自分がどんな気持ちなのかがわかったら、周りに伝えてみるのも大切なこと。息子にも「今度は自分の気持ちを伝えてみたら?」と自然に話すことができ、彼の悩み解決に向けて、一歩踏み込めたと思っています。

 息子は心のモヤモヤが晴れたのか、すっきりしたような表情で眠りにつきました。不安や悩みを吐き出すことは、子どもにとっても大事なことなんだなと実感しました。

クリスマスのプレゼントにも最適

 著者・えがしらさんの描くイラストはどれも可愛らしく、眺めているだけで優しい気持ちになれるものばかり。クリスマスが近いので、えがしらさんによる感動作『あなたの すてきな ところはね』(玉置永吉:作)とあわせて、大事な人にプレゼントするのも素敵です。

 自分の気持ちを表現し、周りと分かち合うことを習慣にしていけば、コミュニケーション能力が高まりそう。将来、自分の意思を尊重しながら生きるための第一歩が、この本に詰まっているような気がします。

文=吉田あき

◆書誌情報『いまの きもちは どんないろ?』(KADOKAWA)
https://yomeruba.com/product/ehon/322304001394.html

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