母からの突然の提案は「夜のドライブ」―母と娘の穏やかなる時間を描き出す

小説・エッセイ

2011/12/6

夜のドライブ

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 文藝春秋
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:川上弘美 価格:103円

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母と娘の関係は、時に密になりそして、時には疎遠になりながら、独特の親密さと遠慮を持って、続いていくものなのではないでしょうか?

娘が幼い時や、娘に子供ができ、母親がおばあちゃんになった時など、「お母さん」や「おばあちゃん」という、“役割”が与えられているときは、その関係は、その“役割”にある程度そったものとなるのですが、40才を過ぎた独身の娘といくぶん年老いた母という2人には、そんな“役割”が与えられない分、2人の関係は、バランスの取り方が難しいものとなるのかもしれません。

そんな母と娘のある1日の出来事を描いて秀逸なのが、川上弘美さんによる「夜のドライブ」です。

40才を過ぎた独身の娘の真由美に1泊の温泉旅行に誘われた母は、娘の運転が心配だと躊躇しつつも、嬉々として娘の車に乗り、旅行に出かけます。2年前に真面目一徹の夫を亡くしてから、一緒に暮らそうという子供たちの誘いにも応じず、1人で暮らす母親。そんな母親は、娘がドライブインに入るからと言っていたにもかかわらず、手作りのお弁当を用意してきます。ちらしずしに野菜のおにしめ、いわしの梅干煮、切昆布とほたてのいためもの。せっかくのお弁当も食べるタイミングを逃し、宿につくまでおあずけとなってしまうのですが、「あぁ、こういうところがやっぱりお母さんなんだよなぁ」と、アラフォー独身女子の私“ぷりまべら”は思うのです。いくつになっても、子供の食事のことを心配してしまうのですよね、お母さんというのは。

温泉宿では、豪華な食事を楽しみ、床に就いた2人。ところが真夜中に、母が突然、ドライブに行きたいと言い出すのです。娘とドライブに行きたいと願う母、そんな母の気持ちを思う娘。ドライブの最中、穏やかな静かな時間が流れ、2人の間には温かな愛情が通っていき、「あぁ、いいなぁ」と“ぷりまべら”はしみじみと思ってしまいました。

母と娘の微妙な心の動きを描き出した本書、アラフォー以上の女子に特にお勧めです。