結局“Z世代”って何? 年代ではなく価値観で区分する『#Z世代的価値観』の新しさとは

社会

公開日:2023/10/25

#Z世代的価値観
#Z世代的価値観』(竹田ダニエル/講談社)

 言葉としては聞くようになっても、ここ日本で過ごしていると、今ひとつ実態が掴めない「Z世代」という存在。

 明確な定義はないが、「おおむね1990年代後半以降に生まれた世代」「生まれた頃にはインターネットが当たり前にあり、スマホやSNSがある環境で育ってきた若い世代」といった点が特徴といえるだろう。

 そんなZ世代の価値観を解きほぐした書籍が『#Z世代的価値観』(竹田ダニエル/講談社)だ。

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 著者はカリフォルニア大学バークレー校大学院在学中で、“(主にアメリカの)Z世代について書く・Z世代の書き手”の第一人者といえる存在。昨年発売の著書『世界と私のA to Z』も大きな話題を呼んだ。

 その前著から繰り返し著者が書いているのが、Z世代というのは生まれた年月で区切られるものではなく、「価値観」で形成されるものだということ。その前提を踏まえたうえで本書では、著者が暮らすアメリカのZ世代を具体例に、その価値観が表れた様々なムーブメントを紹介している。そこで提示される価値観を列挙すると以下のようなものだ。

・生まれ持った属性や外見にとらわれず、自信を持って人生を謳歌する
・外見的な輝かしさを追うのではなく、内面の充足や安定こそが「ホット」だと考える
・情報はテレビや雑誌のように一方通行のものではなく、誰もが平等に発信して受け取れるものだと考える
・社会的に押し付けられる「理想」から離れて、自分自身を好きになる
・この生きづらい社会で、「丁寧な暮らし」を送って気分良く過ごすだけでなく、社会の大きな枠組みにまで疑いの目を持ち、行動する

 こうやって並べてみると、「日本にもそういう価値観を持った人は出てきているし、注目されるようになってきたな」と感じられるはずだ。

 ただ著者の住む米国との違いは、そのZ世代的価値観が生み出すムーブメントが、日本では小さなものにとどまっているということ。

 本書に収録された著者との対談で斎藤幸平氏が「日本の価値観は一世代遅れている」「今、欧米のZ世代を見ると、日本が次に向かうべき方向性が分かる」と述べていたが、こうしたZ世代的価値観は、これから日本で本格的に広がっていくもの……といえるだろう。

Z世代が抱える矛盾や葛藤の意味するもの

 そして本書が興味深いのは、そうしたZ世代のポジティブな新しさのみならず、そこに潜む矛盾や葛藤も描いている点だ。具体的なエピソードとしては以下のようなものだ。

「これを使えば人生が変わる」などと過度な消費を煽るインフルエンサーに対し、それに反発する「反インフルエンス(deinfluencing)」の動画が流行したが、結局はその動画も代わりの商品を売り込む内容ばかりになっていった……。

 TikTokでおすすめの本を紹介する「BookTok」というムーブメントが盛り上がったが、次第におすすめされる本の多様性が失われ、どの動画も同じような本を薦めるようになり、競争のように「話題の本」を読んだことをシェアする人も増えていった……。

 反消費の活動が消費を焚き付ける結果になり、多様な価値観を広めるはずの活動が、逆にどんどん画一化していく。非常に皮肉な話だが、こうした事態は「Z世代、矛盾しまくりでワロタwww」などとバカにできるものではない。

 Z世代が抱えている矛盾とは、この社会全体が抱える矛盾であり、資本主義というシステムそのものが抱える問題でもあるからだ。

 Z世代が矛盾や葛藤を抱え、この社会の未来に希望も絶望も抱きながら生きているのは、現代社会の最前線で生きているゆえ……ということが本書を読めば理解できるはずだ。

文=古澤誠一郎

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