剛力彩芽×醍醐虎汰朗×スーパーカオスな歓楽街「女子大小路」を舞台に映画化。『アンフェア』作者が送る伏線満載ミステリー

マンガ

更新日:2023/11/10

女子大小路の名探偵
女子大小路の名探偵』(秦建日子/河出書房新社)

 10月13日(金)に公開される映画『女子大小路の名探偵』。剛力彩芽さんが主演を務めます。本作は、『アンフェア』などで知られる秦建日子氏の同名の小説が原作(河出書房新社)。タイトルでお気づきの方もいるかと思いますが、女子大小路は名古屋の歓楽街の名前。愛知と岐阜を舞台にした、先の読めないミステリーです。

 まず本作の面白いところが、物語の始まり方。本作は〈運命の日/そう書き記すと少し大げさに感じる人もいるかもしれない〉という書き出しのプロローグからスタート。その中で、主人公・広中大夏はこの1か月の間に見た“三つの死体”について回想し、誰かと待ち合わせし、命の危機に瀕します。そしてこれまでの出来事を走馬灯のように振り返りながら、物語は始まるのです。この「これからどうなるの⁉」が詰め込まれたプロローグは見事の一言。読了後に読み返せば、待ち合わせした人物が誰だったのかはもちろん「これはこういうことか!」が詰まっています。

 物語は2年前から再スタート。大夏は姉・美桜から「姉の責任としておまえを今ここで半殺しにする」と殴り掛かられ、命からがら実家を脱出。実家のある岐阜から名古屋行きの電車に乗ります。この状況からもわかるように、姉は超短気、しかし美人。人気No.1ホステスでもあります。一方大夏は頼りない上に不幸を呼び込みがち。大学は中退、仕事も続かず。あらゆるトラブルに巻き込まれた挙句、ある日立ち寄った公園で死体を発見してしまいます。殺されていたのは11歳の女の子。この事件は10歳の女の子の死体が発見された事件と同一犯とみられ、連続殺人事件として捜査されます。そして大夏はこの事件の容疑者になってしまうのです。

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 この後も大夏は美桜、警察、バーの客、恋した女の子……さまざまな人間に翻弄されます。そしてピンチに直面する弟を美桜が救うのです。美桜は自分の客、警察、半グレのような男などと渡り合い、時には挑発し、難局を解決していきます。そんないろんなことが降りかかる先の読めない展開、それらをどんどん乗り越える痛快さが本作の魅力。さらに冒頭で説明した物語の始まり方に加え、各章の最後に語り手不明のモノローグが差し込まれるという構成も秀逸。最後にすべてがつながった時の爽快感をぜひ体験してみてください。

 ちなみに本作は東海地方の情報誌での連載として開始。作者あとがきによると、同誌で続編の連載が決定しているそうなので、そちらもとても楽しみです!

文=原智香

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