ダークヒーローを養成する学校!? 『東京殺人学園』の生徒たちが問う“殺しの美学”とは

マンガ

PR公開日:2023/11/13

東京殺人学園
東京殺人学園』(ヒグマ:原作、舛谷隆太郎:漫画/白泉社)

 悪を罰するためなら法や規則なんて関係ない。そんな社会的な枠組みや倫理観から逸脱した行動によって平和を守る“ダークヒーロー”。果たして本当の罪と罰、正義と悪とは……そんな複雑な葛藤や心情を秘めている内面の薄暗さを隠すかのように、ハイテンションに振る舞う姿、ド派手な殺人技の数々。ダークヒーローは、時に正統派ヒーローを凌駕するほどの不思議な魅力で読者を惹きつけ、創作の一大テーマとして愛されてきました。

東京殺人学園』(ヒグマ:原作、舛谷隆太郎:漫画/白泉社)の舞台は、都内で唯一「殺人学科」が存在する学校・不継主高等学校。そこに通う生徒たちは、社会の悪を秘密裏に排除する“プロの人殺し”を目指し、日々殺しの技術を磨く……つまり、不継主高等学校とはダークヒーローを養成する学校なのです。

東京殺人学園

東京殺人学園

 この学園に通う生徒たちは実に様々。例えば、主人公・進藤アヤトは幼少期を海外のテロ組織に育てられ、一流の傭兵になるべく訓練を受けてきました。その後、政府に保護されごく普通の日常生活を手に入れるも、自分に染み込んだ殺しの技術、そしてその能力が暴走したときどうしたら良いのか? と自分の存在価値に悩んでいます。一方で、ただ殺人に快楽を覚えているだけのジャンキータイプもいますし、自分の殺しの技術は悪を排除するためにあると、過激な正義感に囚われる生徒も……。みんな、一見するとごく普通の学園モノにいても違和感がないほど、少年少女らしいあどけなさがあるため、うちに秘めている“殺し”の才能や思想とのギャップに驚きます。

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東京殺人学園

東京殺人学園

東京殺人学園

 また、とにかく血の気が多い生徒が集まっていることから、“学校”という名前から連想される友情、恋愛、といったフレッシュな要素とは程遠い。ページをめくるたびにお見舞いされる、一切躊躇いのない過激で暴力的なシーンに度肝を抜かれます。そんな『東京殺人学園』ですが、実は一番注目してほしいのは各々の生徒たちが問い続ける“殺しの美学”です。

 そもそも不継主高等学校とは、社会の悪を秘密裏に排除する“プロの人殺し”を養成する学校。ですが、社会の悪とは一体なんなのか? と、善悪の定義が人によって異なるように、生徒たちもまた社会の悪について独自のものさしを持っているのです。例えば、一度でも罪を犯したらいかなる理由、更生の兆しがあろうと粛清の対象だと譲らない生徒もいれば、無闇な殺生を軽蔑し、誰かの命を救うため以外は殺しをしたくないと言う生徒もいる。不継主高等学校の生徒たちは、そんな各々の“殺しの美学”を追求し、並々ならぬ覚悟を持って人の命を奪うのです。

 もちろん、どんな理由があろうと人を殺めることは許されることではありません。私たち読者はそう理解しているはずですが、東京殺人学園の生徒たちの鮮やかな殺しのシーン、そこから垣間見える“殺しの美学”に触れていると、命とは、そして自分にとっての罪と罰、正義と悪とは何なのか? と、何かが試されているような緊張感に囚われます。不継主高等学校の生徒たちと一緒にあなたにとっての美学を追求するような気持ちで、『東京殺人学園』の世界にどっぷりと浸かってみてはいかがでしょうか。

©ヒグマ・舛谷隆太郎/白泉社
文=ちゃんめい

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