元ハロー!プロジェクトメンバー竹内朱莉の人生は墨だらけ! アイドルを卒業、書道家として世界を目指す彼女の「書真集」に込められた決意

文芸・カルチャー

PR公開日:2023/11/10

人生墨まみれ
人生墨まみれ』(竹内朱莉/イマジカインフォス)

 芸能人のファンも多いことで知られるハロー!プロジェクトのアイドルグループ・アンジュルム。そのリーダーを務めていた竹内朱莉が、今年2023年6月にグループを卒業。これから、書道家として世界に羽ばたこうとしている。

 卒業の翌月に発売された書真集『人生墨まみれ』(イマジカインフォス)には、雑誌『S Cawaii!』の連載で書きためた全17回分の書道作品を掲載。アンジュルムのメンバーが竹内に送る“書”や、今年2023年2月の書道展開催中に行われた貴重なロングインタビューも新たに収録された。書道家としての実力と、“これから”に向けた決意が、しっかりと刻まれた一冊だ。

人生墨まみれ

 2021年3月から2年と数ヶ月。彼女は“書”を書き続けた。その文字の中には、自身やグループに向けたさまざまな想いが浮かび上がる。

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 たとえば、赤い紙に書かれた「祝」の字は、2021年11月号のもの。赤い紙に書いたのは、スマイレージ(アンジュルムに改名する前のグループ名)のときのメンバーカラーが赤だったから。そして、スマイレージの正式メンバーになってから10年たった自分をお祝いしたい気持ちがあったから。

 黒い文字の上に重ねられた金のスプレーは「今まで頑張ってきた自分への誇らしさ」だという。赤・黒・金のコントラストは、笑顔でグループの苦難を乗り越え、引っ張ってきた彼女にふさわしい輝きを放つ。彼女の頑張りを知る人ほど、共に喜び、誇れる、そんな一枚なのだろう。

 ちなみに、隣に並んでいたのは「陰」という文字。これは10年前、スマイレージとして活動していた頃を表現した書だという。なかなか“地上”に上がることができなかった、どん底時代。紹介文の中で彼女は「(あの頃に)戻りたくはないですよ、楽しかったけど」と笑う。「陰」の時代を決して忘れることはない。けれど「陰」があったからこそ現在の輝かしい姿がある。

人生墨まみれ

 書をしたためる姿も数多く収められている。大胆で、潔い、筆運び。それは、ステージで見せていたクールでかっこいい姿とも重なる。美しいビジュアルや、華やかなヘアメイク&ファッションも、本書を楽しめる要素のひとつである。

 字を書くときはいつも「こんなふうに書きたい」とあらかじめ想像している、という竹内。ただ、途中で迷ってしまったら負け。一文字目がどれだけ上手く書けていても、迷った時点で処分するそうだ。

 連載内の企画で竹内を撮り下ろした二刀流アイドルの写真家・豊永阿紀(HKT48)は、撮影しながら、迷いのない筆運びにくぎ付けだったという。「“迷いのなさ”が好き」「書に向かう姿もカッコいい」「ご自分をカッコいいと思っていないところも好き」とラブコールを送っている。

人生墨まみれ

 個人的には「三日坊主」のページが気に入っている。「失敗や悩みも3日もたたずに切り替えられちゃう」というポジティブな性格を彼女らしく表したもの。その言葉を、本来とは違う意味合いで表現するところがユニークだし、「祝」のようなアートな書とはまた違った達筆ぶりを見て取れる。アイドルを続けながら「書道五段・教授免許状申請資格者」を取得したという努力家の一面が透けて見える一枚だ。

 そんなポジティブな彼女も、初個展の前は、電気もつけないままヨギボーに座って1日を過ごすほどの“産みの苦しみ”を味わったとか。身を削り、身を削り、最後は無双状態になって書き続け、初の個展は墨まみれだった人生の集大成となった。

 この経験を経て「若い年代が気楽に入れるような個展を開きたい」という新たな目標も確立したという。11月18日から開催される書道展「煌々舞踊 福岡」は、その第一弾となるのかもしれない。

 日本の伝統文化を、既存の枠にとらわれず、より身近に、より芸術的に…というコンセプトを掲げる書道家・竹内朱莉の挑戦は、これからが本番。「今自分がしていること、これからしようとしていることに対して不安はありません」と言い切る彼女は、やはり潔くてかっこいい。これからも大胆に自分の人生を切り拓いていくのだろう。

文=吉田あき

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