人懐っこすぎて保護猫になってしまった猫との物語。飼い主との意思疎通が尊すぎるコミックエッセイ『黒猫ろんと暮らしたら』

マンガ

更新日:2024/1/18

黒猫ろんと暮らしたら
黒猫ろんと暮らしたら』(AKR/KADOKAWA)

 猫と聞くと、真っ先に思い浮かべるのは、自由気ままでマイペースな姿だ。しかしよくよく見てみれば、当たり前だが、猫にだってそれぞれに性格があり「こんな一面もあったのか」と驚かされることも多い。AKRさんが描く『黒猫ろんと暮らしたら』(KADOKAWA)は、そんな猫の意外な一面に驚かされ、そして、微笑ましい気持ちにさせられるエッセイ漫画である。

 著者のAKRさんは、ろんを引き取るまで猫を飼ったことがない猫飼い初心者だった。しかしある日、病院で保護猫だったろんに出会い、運命を感じて引き取りを決意。そこから二人の生活が始まる。

 ろんは特別人懐っこく、やってきてすぐに飼い主の膝の上で寝たり、布団に入ってきたりする。元々野良だったそうだが、あまりに人懐っこいせいで、近所のおじさんの足にすり寄って蹴られていたのを保護されたらしい。

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黒猫ろんと暮らしたら

 ろんは心が優しい猫だ。おもちゃで遊んでいるときに爪で著者の手を傷つけてしまったことを気にしてか、その後はなんと爪をしまってソフトタッチに変えるほど。

黒猫ろんと暮らしたら

黒猫ろんと暮らしたら

 おまけに、おやつが食べたいときは、セルフお手で主張。「犬……?」と思わず突っ込みたくなるほど、なんだか“猫っぽくない”のだ。

黒猫ろんと暮らしたら

 猫を飼うのが初めてで、何をしても恐る恐るな著者に対して、まるで全てを受け入れるかのような包容力を見せるろん。ろんが可愛いのはもちろんのこと、次第にそんな二人の関係まで愛おしく感じてくる。

黒猫ろんと暮らしたら

 もしかしたらろんは、著者のお世話をしてあげているような気持ちなのかもしれない。飼い主の真似をして尻尾で遊んであげている(?)ような姿を見て、そう思った。

黒猫ろんと暮らしたら

黒猫ろんと暮らしたら

 もちろん、動物と暮らすというのは、楽しいことばかりとは限らない。あるとき、飼い主はろんのトイレに血がついているのを発見。そのまま病院に連れていくと、膀胱炎と診断され入院することとなる。初めてのことに慌てふためきながらも、そこで新たに知るろんの性格や習性もあり、改めて環境を整備するきっかけとなった。

黒猫ろんと暮らしたら

 当たり前だが動物もそれぞれ性格が違うので、既存のイメージや飼育書に書かれていることだけでうまくいくとも限らない。一緒に暮らしながら、少しずつお互いのことを知り、より快適に過ごせる関係が生まれていくのだ。この本では、そんな理解していく過程もうかがうことができる。

 気がつけば、第1巻の作中では5年が経ち、著者もろんのことを色々と理解しているようになる。少し手慣れたように見えるろんへの対応もまた微笑ましい。

黒猫ろんと暮らしたら

 あたたかくて、ちょっと鈍臭くて、面倒くさがりで、甘えん坊なろん。読んでいるうちに、気がつけばすっかり私たちはろんのファンになっている。そしてそんな愛らしいろんを引き取ったのがこの著者でよかったと心から感じられる。ろんとAKRさんの微笑ましい生活を垣間見られる一冊だ。

文=園田もなか

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