通称「日本のバフェット」87歳現役トレーダーのテクニックとは。ほかの投資家の心理を読むことが、株で勝つためには必要不可欠

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公開日:2024/2/2

87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え  資産18億円を築いた「投資術」
87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え  資産18億円を築いた「投資術」』(藤本 茂/ダイヤモンド社)

 今、87歳の現役トレーダーが注目を集めている。2.26事件が起きた年に生まれた「日本のバフェット」と呼ばれる87歳のシゲルさん。総資産約18億円。月6億円を売買しながら日々相場に挑んでいるという。

 毎日2時起きだというシゲルさんはとにかく株が好き。『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え  資産18億円を築いた「投資術」』(藤本 茂/ダイヤモンド社)では、高度経済成長からコロナショックまで、荒波や修羅場をくぐってきたシゲルさんの秘密が明かされる。

成功も失敗も……「全部見せます」の言葉通りに

 シゲルさんは19歳から株を始め、約70年間投資を続けている。高校卒業後にペットショップに就職、その後自らのペットショップを経営するようになった。さらに雀荘を始め、経営者としての手腕を見せるも、専業投資家に転身。今も株を中心に回っている生活を過ごし、それをとても楽しんでいる。

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「ボケてる暇などあらへんで」と今も数年後の未来を見据えて投資を行っている。その意欲や熱意は私のような株素人からすると凄まじいの一言だ。経歴などを読むとやはり特別な嗅覚がある人だという印象を受けるが、バブルのときには資産を大きく減らしてしまったこともあったという(と言っても、数億円はキープしていたそうだが……)。

 プロ野球選手ではないが、デイトレードの世界も勝率10割は有り得ない。パート2では、シゲルさんの1日のスケジュールに沿って実際の取引の様子が描かれる。今までの株取引の成功はもちろん、失敗に関しても書かれていて、デイトレードの世界をリアルに感じられるだろう。

おすすめの銘柄が紹介されていないわけ

 パート2の前半では、「成行注文」(株価を指定しない注文)、「指値取引」(この株価になれば買うと予め指定した注文)といった、デイトレード・株取引の基本が解説されている。現物取引と信用取引の違い、チェックすべき日米の主な指標、「板」とは何なのか、など基礎的な単語・知識が詳しく紹介されている。ただ、どうしても専門的な側面があるので、分かりにくいと感じる人もいるかもしれない。

 例えば信用取引・カラ売りなど、本や映画でよく登場するが、実際に理解するのはなかなか難しい。もちろん、本格的にデイトレードをしたい場合はしっかり読み込んでおくべきである。ただ、初心者や素人は信用取引もカラ売りも、理解に留めておいたほうが無難だとビビリの私なぞは思う。

 重要なのは、シゲルさんが実際の取引銘柄、保有している・していた銘柄を「紹介」しているだけで、決しておすすめの銘柄だとうたっていないことだ。

運用資産は18億円ありますが、利益の出た株はすぐに売り、そうでない株はそのままなので、評価損益はマイナス2億円以上あります。なので「この株を買えば儲かるんだな」とは安易に思わないでください。

 パート3ではシゲルさん流「1・2・6のルール」(最初に打診買いとして1000株購入。調子を見て良さそうと思えばさらに2000株、「これはいけそうだ」と思ったら6000株買い足すというルール)や、どんな分析の上で株を買っているかなど、投資の方法が明かされる。熟練の分析や相場を読む力に憧れ、つい頼って買いたくなってしまう。そうした考えにシゲルさんは警鐘を鳴らす。

自分の頭で考え、ほかの投資家心理を読むことが、株で勝つためには必要不可欠なのです。

 株式市場にはファンドや個人投資家など、いろんなライバルが存在する。デイトレーダーはその読み合いに勝たなければ儲けることができない。

 失敗から学び、成長していこうともがき、自分で考える人だけが生き残れる世界である。いまだに株に対し、博打のようなイメージが残っているが、実際のところはデータとその人々の心理を読む高度な情報戦であり、自分の資産を賭けた戦いなのである。こうした世界があるのだと改めて驚かされた。

好きこそ物の上手なれの集大成

 87歳になっても毎日株をやるのは、何より好きだから。趣味であり職業であり、生きがいでやりがいなのだろう。そこまで夢中になれるものがある人生、とてもうらやましいではないか。正直、真似をしようと思ってできるものではない。しかし、シゲルさんの生き方そのものが、私たちに大切なことを教えてくれるだろう。

文=宇野なおみ

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