子どもは親の「言うこと」ではなく、親の「すること」をする。世界中で200万部読まれた子どもとよい関係を築く方法

文芸・カルチャー

公開日:2024/2/29

子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本
子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』(フィリッパ・ペリー:著、高山真由美:翻訳/日経BP 日本経済新聞出版)

 言うことを聞かないわが子を感情的に叱ったとき、「自分が子どもだったときの親のような言い方をしてしまった…」と自己嫌悪に陥ることはないだろうか。親に感謝している人もいれば、「自分は親のような子育てはしたくない」と心に決めている人もいるだろう。

子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』(フィリッパ・ペリー:著、高山真由美:翻訳/日経BP 日本経済新聞出版)は、英国の心理療法士による育児書。世界46カ国で200万部以上を売り上げている。本書いわく、著者の願いは「子どもをコントロールする」ことではなく、「子どもとのよい関係を築く」こと。

 本書の冒頭では「過去は私たち(と、子どもたち)を攻撃する」という点について語られている。親は、自分自身が子どものころに与えられた体験に言動が大きく左右される。自分が受けたネガティブな仕打ちは、はるか過去より親から子へ受け継がれてきた、ということだ。自分が親になったからには、自分が受けてきた「役に立たなかった物事」は捨て、「必要な物事」だけを選び取って、何千年も昔からはるか未来まで連綿とつづく鎖の輪の形をつくりなおすことができる、そしてそれはわが子やそのまた子どもの人生がより良いものになる、と述べる。

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 本書いわく、子どもは特に親の「言うこと」ではなく、親の「すること」をする。つまり、自分が子ども時代に親から受け継いだありようや行動パターンが、自分とわが子の人生に大きな影響を与える。特に、子育てにとって一番邪魔になるのは、自分の内なる自己批判だそうだ。

 本書は、「子どもとのよい関係を築く」ための方法の一つとして、子どもの感情を抑え込んだり、逆に過剰に反応したりするのではなく、親が受け皿になるように子どもの感情をあるがままに受け入れることを勧めている。これは心理療法士がクライアントに対して取る態度と同じであるそうで、子どもとのバトルは減るという。例えば、賛否両論はあるかもしれないが、子どもが学校に行きたくないと言ったとしたら、親は「行きなさい」と子どもの感情を抑え込むのではなく、「あなたはいま、本当に学校がいやなのね」と受け入れるところから始める、という態度だ。子どもは、親を必要とするときに感情をしっかりと受け止めてやれば、子どもは自分で感情をなだめる方法を内面化し、最終的には自力でできるようになる、と説明している。

 しかしながら、もし自分自身が子どものときに親から感情を抑え込む方法で育ってきたのなら、同じ態度でわが子に接しがちになる、と本書。これを改善するためには、大人になった親である自分のほうも、感情を扱う練習が必要である、という。本書が紹介する練習の一つは、自分自身を定義するのではなく、自分の感情を定義すること。つまり、「私は悲しい」「あなたは悲しいのね」と言う代わりに、「私は悲しく感じている」「あなたは悲しく思っているように見える」と表現し、この言い方を習慣化する。ちょっとした工夫だが、こうすることで、悲しみと同化するのではなく、「悲しい」という感情をより客観視できるようになると説明している。

 本書が紹介する子育てに関するいくつかのルールは、自分やわが子が何歳でも当てはまる、としている。子どもとの関係を変えたい人に、ぜひ読んでもらいたい。

文=ルートつつみ@root223

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