大谷翔平も愛読する、戦時中スパイとして活躍した思想家の哲学。現代社会の多すぎる情報を取捨選択してうまく生きる

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公開日:2024/3/11

またうっかり、自分を後回しにするところだった
またうっかり、自分を後回しにするところだった』(中村天風:著、中村天風財団:協力、アスコム編集部:編集/アスコム)

 お願いされたらNOとは言えない。周りの意見が気になってしまう……。そんな自分のこと、自分の意見を後回しにしている人、多いのではないでしょうか? 私自身もそのタイプ。なんだかんだと家族の都合を優先し、「まあみんながいいなら……」と自分より周りの意見を優先してしまいがちです。そんな人へ紹介したいのが『またうっかり、自分を後回しにするところだった』(中村天風:著、中村天風財団:協力、アスコム編集部:編集/アスコム)です。

 本書はその名の通り自分を後回しにしてしまっている人に向けた一冊。実は大谷翔平も中村天風の本を愛読書にしているようです。そんな昭和の哲人・中村天風の言葉を紹介し、自分を大切にして生きていくための52の教えを紹介します。

 本書の一番のメッセージは、

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あなたはあなたのままで素晴らしい

 ということ。天風さんは『青い鳥』の「幸福の鳥は実は家の中にいた」というエピソードを掲げ「幸福は物あるいは相対的な現象の中にあるのではなくて、おまえの心の中にあるんだぞ」と説きます。「どうせ自分なんてこの程度」という過小評価は損するだけ。天風さんの言葉を読んでいると、「自分はこれからどんなことにでも取り組める、可能性のかたまりだ」という前向きな気持ちが湧いてきます。

 さらに本書ではこの前向きな気持ちを失わずに生きるための心構えを紹介。中でも印象に残ったのは

今の人はマスコミの発展でいろんなことを知ってるね。本当に人生に必要な尊いことは知らないで、猫の目のようにコロコロ変わる消極的な情報の波にあっちこっち引きずり回されて、そりゃもう潜在意識の中はくだらないことで充満している

 という指摘。「どうしても取り込まなきゃならないなんてことは、一日のうちにそうそうあるもんじゃない」ので、「心の倉庫の大掃除をして、心の中を清いもの、尊いもの、楽しいもので満たしておけば心は安定する」と天風さんは説きます。それはまるで現代をともに生きる人からのような教え。他にも本書の内容は今から50年以上も前に亡くなった人の指摘とは思えない、現代に即したものばかりです。

 また天風さんは人間のことを幾度も「万物の霊長」と称します。人間は宇宙の進化と向上に順応できる力を与えられている。だからこそ程度の高い、豊かな生活ができると言います。ここでいう“程度の高い”とは心が豊かな状態をさすもの。そしてその人間に生まれてきたことは偶然ではなく必然であると天風さんは伝えます。私たちはこの世界の進化と向上に貢献する力を生まれながらに持っている、この「絶対的な肯定」が天風さんの出発点。それを忘れず、常に前向きに向上心を持つことで人生は良い方向へ向かっていくのです。

 戦時中はスパイとして活動し、戦後30歳にして結核を発病。当時「死病」と呼ばれていたこの病を奇跡的に克服し、その後新聞記者や会社役員として活躍するなど波瀾万丈の人生を歩んだ天風さん。彼だからこその重みのある言葉が並ぶ本書からは、きっと今のあなたに必要な一言が見つかるはずです。

文=原智香

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