自分の寿命をほいほい他人にあげる女子高生? 寿命を譲渡するたびしわしわになっていく手を見て、幼馴染みが取った行動は…

マンガ

公開日:2024/3/30

寿命をゆずる友だちの話。
寿命をゆずる友だちの話。』(マトマ/KADOKAWA)

 大切な人が他人に自分の寿命を切り売りしていたらどうする? 長生きしたいから、自分にも寿命を分けてほしいと思うだろうか? そう思ってしまったらもはやそれは大切な相手とは言えないだろう。一方で、自分の家族や大切な人の寿命が僅かしかないとわかったら、なんとかして延命してあげたい。まわりに寿命をあげられる人がいたら縋ってしまいたくもなるだろう。

寿命をゆずる友だちの話。』(マトマ/KADOKAWA)は、X(旧Twitter)での連載で話題となり漫画化した作品だ。高校3年生のミユキとヒカリは幼馴染みで大親友。一見してその辺にいそうな女子高生の仲良し2人組なのだが、ヒカリは普通の高校生ではない。彼女は人の頭の上にその人の寿命を数値として見ることができ、また自分の残りの寿命を他人に譲渡することができるのだ。

「病気の14のガキに20まで生きられる分の寿命ほしーって言われて 20-14=8 8年わたしといた」と、計算を間違えつつもホイホイ寿命を渡してしまうヒカリ。「バカなのぉ?」と返すミユキの意見に、読みながら頷いてしまうだろう。8年あれば、赤ちゃんも小学生になっている年数だ。そして、14歳のガキと言ってもヒカリ自身も高校生のため、そこまで歳は変わらないではないか。10代の高校生の寿命は残り何年あるかと考えてしまった。80代まで生きられたとして、残り70年ほど。人に渡し続けていたら、すぐ無くなってしまいそうな数字だ。もちろん寿命を渡してしまった分、ヒカリの寿命は減っていくし、残数が0になれば彼女は死ぬ。

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 寿命を減らさないようにヒカリを守ってくれる大人がいればいいのにと思ってしまうが、実際はそう甘くはない。ヒカリは両親を亡くし親戚のもとで暮らしているが、その親戚は喜んで金と引き換えにヒカリの寿命を譲渡しようとするような輩だ。新しくできた彼氏ですら寿命がほしいためにヒカリに近付いてきた。対して、ミユキはヒカリの彼氏が寿命のために近付いてきたとわかれば、怒って殴りかかっていく。ミユキは、自己主張が強くやや性格に難があり、ヒカリ以外に友達がいない。ヒカリは歯に衣着せぬ言い方をするミユキを受け入れ、救われている。お互いが欠かせず、パズルのピースがピタっとハマると表現したくなるような2人だ。

 寿命を渡すごとにヒカリの手は、その分歳をとるかのようにシワシワの老婆の手になっていく。多感な高校生の手が、人に見せたくないほどにボロボロになるということに切なさを感じる。萎れた手がコンプレックスだとわかっているにもかかわらず、ミユキがその手をとりネイルをするシーンがある。ヒカリは「似合うわけがないのに」と思いながら、出来上がったネイルにかわいいと心ときめかせる。ミユキの何気ない行動がヒカリを支えているのだ。

 人の寿命が見えることはなんと残酷なことだろう。自分の大切な人の余命があと僅かだということもわかってしまう。最近よく聞く「生きづらさ」がどうのと言っているレベルではない。2人の友情がただの友だち以上に強い絆で結ばれていると思えるからこそ、ふりかかっていく出来事に胸が締め付けられる。2人がどうなるか、最後まで読んでほしい。

 本書を読むと、自分の寿命もまわりの人の寿命もわからないからこそ、日々を大切に生きていかなければと思わされる。

文=山上乃々

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