夢はどこまでも高く!子どもへの深い愛情と親子の結びつきを感じられる絵本『うちゅういちのたかいたかい』

文芸・カルチャー

PR公開日:2024/4/9

うちゅういちのたかいたかい"
うちゅういちのたかいたかい』(中央公論新社)

 子どもが大好きな「たかいたかい」。宇宙一高いところまで「たかいたかい」ができたら、どうなっちゃうの? 著者のホッシー ナッキーさんの息子さんが5歳の頃に発想したお話をもとに制作されたという絵本『うちゅういちのたかいたかい』(中央公論新社)を読んでみました。

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ページをめくるたびに驚きがいっぱい

 この絵本は、ページをめくるたびに驚きがあります。最初は手の届くところで「たかい たかーい」をしていたパパですが、小さな息子から「もっと たかーくできる?」と言われて大奮闘。高さは「木よりも高く」なり、「屋根よりも高く」なり、それからそれから…。筆者の7歳の息子も、その高さが高くなればなるほど「あっはっは、すごい!」と楽しそうに笑っていました。

 本書はページをめくるときに、ヨコではなくタテに開くようになっていて、ここにも「たかいたかーい」の高さが表現されています。文章もまた、高さが高くなるたびに「たかい たかーーい」「たかい たかーーーい」と変化。読み聞かせでも、“たかーーーーい!”と思いきり音を伸ばして読んであげると、その高さが声からも伝わりそうです。

 高さによって、子どもから見えている風景が変わるのも面白いところ。子どもが木の上まで持ち上げられたら、木の上にある鳥の巣が見えるし、屋根よりも高く持ち上げられれば、2階建ての家の人たちが上を見上げて驚いている様子が見えています。高いところではどんな景色が見える? もっと見てみたい!という子どもたちの夢が膨らみ、想像力を掻き立てられるのではないでしょうか。各ページには、高さが高くなるたびに変化する「あるもの」が描かれているので、子どもと一緒に探してみてください。

筋肉を鍛えるページは遊び心満載

パパはもっとたかーくするために

 息子の喜ぶ顔を見るために筋トレをして腕を鍛えるパパの姿も、我が子の笑いのツボでした。重い岩を引っ張り、ダンベルを持ち上げて、どんどん大きく太くなっていくパパの腕。その鍛え方がどんどんエスカレートしていくという遊び心あふれるページなので、時には「そこまでやる!?」とツッコミを入れながら楽しめるはずです。

パパかっこいい!実は子どももかっこいい

ねぇパパ〜

 たかくたかーく子どもを持ち上げるパパに「パパすごい!」と声をあげる息子。でも、パパがここまで強くなれたのは、息子がパパに「もっと たかーく できる?」とお願いしてくれたおかげ。どんどん強くなるパパの姿から、子どもへの深い愛情が感じられるのと同時に、親は子どもから教わることがたくさんあるんだな、と実感しました。ラストには、親子の結びつきの温かさが感じられる感動の結末が待ち受けています。

 作者のホッシー ナッキーさんは「夢は諦めなければ叶う」ということを自分自身にも子どもにも証明するために絵本づくりを始めたとか。絵本の商業出版を目指して6年。本書は見事に「書店員が選ぶ絵本新人賞2023」の特別賞に輝き、贈呈式では緊張している親を原案の長男がステージに引っ張っていってくれたそう。息子の幼い頃の発想が絵本になり、親の夢まで叶えてくれたというエピソードに心が温まりました。

 昨今は子どもの気持ちを先回りしたような子育てが増えているそうですが、本書を読むと、子どもの言葉をちゃんと聞けているのかな、本当にそれが子どもの望んでいることなのかな、と自省の念が起きてきました。何かと悩みが絶えない子育てですが、子どもと向き合っているうちに解決することは少なくないのでは!? そんな気持ちにさせられる一冊でした。

文=吉田あき

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