なぜ、朝井リョウはこんなにも少女の気持ちが分わるのか…

小説・エッセイ

公開日:2013/6/1

少女は卒業しない

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 集英社
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:朝井リョウ 価格:1,132円

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尾崎豊の『卒業』が少年の卒業を描いた傑作ならば、朝井リョウの本作品は少女の卒業を描いた傑作に違いない。歌のように、すっと入ってくる美しいこの短編集の少女達は心に強い決意を秘めている。少年のような荒々しさはないが、少女たちは繊細なようで意外と大胆、力強い。青春の甘酸っぱさや痛み。大きく踏み出すそれぞれの第一歩に胸が締め付けられる。

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統廃合が決まったある進学校の卒業式。翌日には取り壊されてしまう校舎で、少女7人はそれぞれの決意をする。叶わぬ恋と知りながら、式の早朝、想いを伝える「エンドロールが始まる」。生徒会の先輩への思いを送辞で読み上げる「在校生代表」。特別学級の生徒との友情を描いた「ふたりの背景」。亡き恋人の追憶に浸る「夜明けの中心」――本作は、岐路に立つ少女たちの「卒業」や「別れ」が描かれた連作短編集だ。だが、短編集とは思えない密度の濃さに驚かされる。恋愛、友情、成長。青春の全てがここに詰まっている。

よくもまあこんなにも少女の気持ちが分かるものだ。好きな人のために伸ばした髪。伸ばした爪。手作りのお弁当。お揃いの鞄。独り占めにしたいけど、でも、みんなに知ってほしい彼の魅力――ぎゅっと凝縮された表現に心を掴まれる。どうもきゅんとしてしまう。青春を描かせたら、朝井リョウの右に出る者はいない。

岐路に立つ全ての人へ読んでほしい。青春の痛みや切なさが漂う作品だが、ほんの少し、新しい一歩を踏み出す勇気が出るような気がする。


統廃合が決まった高校の最後の1日、卒業式をめぐる少女たちの連作短編集

幼なじみに対する、複雑な想いを感じる「屋上は青」

送辞に想いを乗せる「在校生代表」。どれも甘酸っぱい青春のストーリー。自分の青春時代を思い出させられる