「史上一番泣ける舞台作品」のノベライズを電子版で

小説・エッセイ

2013/7/9

くちづけ

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 幻冬舎
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:宅間孝行 価格:1,296円

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かつて盲学校、聾学校、養護学校と別々にされていたものが、学校教育法の改正によって、2007年度から「特別支援学校」に一本化。特別支援教育が行われています。文部科学省によると、特別支援教育の定義は、障害をひとつの個性として捉え、その子どもが持つ特別な教育的ニーズに沿って実施される、というもの。社会全体で、障害を個性として認めていこう機運が高まりつつあります。

さて、本作のテーマのひとつは「知的障害」です。知的障害とは「知的機能に制約がある」「適応行動に制約を伴う状態である」「発達期に生じる障害である」の3点で定義され、知能指数でみると70以下(平均は100)とされます。主人公「うーやん」含め、知的障害者のグループホーム「ひまわり荘」の住居者たちは語彙が少なく、精神のコントロールが難しく、ときに問題行動を起こしますが、周囲の人たちはあくまで「自立したひとりの大人」として接します。これは、逆にいうと「障がい者だから」という甘えを許さず、シビアなことだといえるのかもしれません。

主人公のうーやんは35歳。缶を潰す仕事をする、ひまわり荘で最も古い住人です。精神年齢が子どものままで止まっているうーやんは、通勤でバスに乗ると、周囲の大人が付けている香水のニオイに「臭い! 臭い! 吐く! 吐く!」と大騒ぎをしたり、花見の席では飲めないビールを飲もうとして案の定吐き出し、あたりの酒を周囲に撒き散らし始めたり、イヤなことがあると知らない人の家に上がり込み、勝手にカレーを食べたりと、地域ではちょっと名の知れた人物。しかし、うーやんをよく知る人は、彼の純粋さや優しさを知っています。
ある日、ひまわり荘に新しい管理人と、心は7歳で止まっている30歳のかわいいマコがやってきますが、物語が始まってまもなくマコが死に…。

本作のもうひとつのテーマは「父と娘の愛」。管理人を務める元漫画家の阿波野幸助(ペンネーム・愛情いっぽん)は、わが子の障害に悩み、愛情ゆえに下した最後の決断が周囲に衝撃を与えます。

本作は、作者の宅間孝行が主宰する劇団「東京セレソンデラックス」で初演され、「舞台史上一番泣ける」と評価された舞台劇が小説化されたもの。珍しい“舞台作品からのノベライズ”ということもあり、作中のセリフがどれも魅力的。個性をキャラクターと見なしてもよいなら、なんとキャラクターが立っていることか。

ちなみに、本作は実話が元になっており、読後は「知的障害」や「親子愛」について深く考えさせられます。

貫地谷しほり、竹中直人、さらに作者である宅間孝行が出演している劇場版もまだ全国で観ることができますので、本作を読んだ後、足を運んでみては。

【映画「くちづけ」オフィシャルサイト】
http://www.kuchizuke-movie.com/


バスで「臭い!」「吐く!」と大騒ぎするうーやん

マコちゃんは、なぜ死んだのか

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(C)宅間孝行/幻冬舎