気付けば逞しくなってしまった元・女のコに捧ぐ、不器用女子の成長物語

小説・エッセイ

更新日:2013/9/11

私の中の男の子

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 講談社
ジャンル: 購入元:BookLive!
著者名:山崎ナオコーラ 価格:1,080円

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女も30を過ぎれば後悔を含んだ思い出くらい、誰だってひとつやふたつは持っている。目の前のぬくもりにふらりと甘えた夜、最後まで気持ちを伝えられずに終わった恋。永遠に続くと思っていたのに、些細なことでたやすく途切れた誰かとの関係。著者はそんな、思い出すと胸がちくちくする経験を描くのが本当に、嫌味なほど巧い。「あーやりがち……」といつかの自分を重ねては、思わず苦笑いを浮かべてしまった。

本作は女性情報誌『フィガロ・ジャポン』にて、2010年7月から1年間にわたった連載をまとめたもの。主人公・雪村は、自分は女性であるという認識がもともとちょっと欠けている女の子だ。19歳で作家となり社会人の仲間入りをし、また著名人として世間から注目される存在になると、その欠落は女性として扱われることへの違和感や、他人より見劣る容姿へのコンプレックスとなって雪村自身を苦しめていく。

主人公が女流作家であることや「書いた小説が、性的な意味合いも持つタイトルだったためか」などの記述に、読み始めたときは、コレって…自伝小説? と思った。特にそういうわけではないらしいが、とはいえ主人公が抱える苦悩や書く以外にも意外と広い仕事内容、編集者とのやりとりなどはさすがに超リアル。そこだけストーリーから切り離し、ついつい書き手本人の心理として捉えてしまいたくなるのは私だけではないはずだ。

著者が主人公にどれだけ自身を投影しているかはさておき、物語の中で雪村は私たちと同じように恋に悩み、仕事で壁にぶつかり、人生に葛藤する。そして傷つき、何かを失うたびに、自分が自分らしく生きるための強さを身につけていくのだが、その道のりのあらゆる場面が「そういえば、私もこんな時あったよな」と、これまで自分が辿ってきたものとどことなく重なるのだ。

辛かった経験をひとり頭の中で振り返ってみても、あの時と同じ苦みや痛みをまた味わってしまうだけ。けれど、「あーこれわかる!」と、何かへの共感とともにさかのぼると、苦みや痛みがすっとやわらぎ、優しくあたたかい気持ちで向き合えるから不思議だ。不器用ながらもひたむきに生きる主人公の姿からは活力と勇気をもらえるはず。毎日頑張るアラサー~アラフォー女子にぜひ読んでみてほしい。


吹けば飛ぶような存在になりたい…。女子なら一度は思ったことがあるはず

想いを寄せる編集者・紺野とのデート! カチカチに緊張する姿はどこから見てもやっぱり女のコなのだ

無二の友人・時田の言葉。不器用な雪村をまるごと優しく包み込む

我慢することは、選択を放棄した楽な生き方。あなたも身に覚えはありませんか
(C)山崎ナオコーラ/講談社