ラブコメとは、こういうことさ

いつもライトノベルやコミックをレビューするとき、その外延を紹介したり、聞かれてもいない蘊蓄をたれているのですが…。今回レビューする『恋愛しませんか？』は、そういうの抜きで書かせていただきます。

今や、毎日のように新刊が大量に供給されて、大ヒットするものもあれば、人目に触れないうちに消えていく作品もたくさんあります。作品の完成度の優劣ももちろんありますが、時代の最大公約数的な需要とマッチするかどうか？ が鍵だと、個人的には思っています。逆にいえば、誰もが共感するものではないかもしれないが、「こいつはすごい！」という作品もあるわけでして。本作『恋愛しませんか？』は、オレンジや、サラダ好き（『気まぐれオレンジロード』『サラダデイズ』）も納得のラブコメの優等生だと思い知りました。それはもう、読んで「ふーん」というレベルではなくて。胸を打ち抜かれて、全3巻を読み終わるまで止まらなかったという具合です。

本作のキャッチは「メイド喫茶のメイドさんに逆ナンされて…」という風に公式ではなっています。たしかに本作冒頭は、メイド喫茶を訪れた主人公の不破くんが、帰りにメイドさんのふわりちゃんから“お試し恋愛”を持ちかけられるところではじまります。

しかし！ しかしですよ、ラブコメ好きとしてはこれだけは言っておきたい！ ということがあります。不破くんの女性不信の設定。ふわりちゃんの不破くんとの謎因縁。そして、不破くんを慕うもう一人のヒロイン、るりちゃんの存在。彼らの相関関係だけでも、何かゾクゾクと来るものを感じるのに、さらに不破くんがヘタレになった原因、トラウマが物語と綺麗にシンクロしているのです。もちろん、暗い過去は不破くんだけが抱え込むものではなくて、それは同時にふわりちゃんやるりちゃんの行動にも影響を与えている。そういう骨太の構造が下地にあって、その上でお約束の水着回などがあり、とても読みやすく仕上がっています。

ラブコメ好きはもちろん、波長の合うキャラに寄り添って一緒にやきもきするのが好きな人にはお勧めですよ。