終わりたくないから始めたくなかった、けれど気づけば止められなくなっていた、恋

小説・エッセイ

2010/11/12

あられもない祈り

ハード : iPhone/iPad 発売元 : Kawade Shobo Shinsha Ltd. Publishers
ジャンル: 購入元:AppStore
著者名: 価格:800円

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恋をしているときなんて、大体みんな、馬鹿になっている。と、思う。
冷静なつもりで、踏みとどまっているつもりで、だけど我を忘れて、想いにぐるぐるまきになった〈私〉の狂おしさが、行間の隙間からこぼれるように伝わってくる。
読み進めるにつれて、その感情の蓄積にこちらも支配されてしまう、これはそんな小説でした。

金を無心してくる母、支配的な恋人、そして自らを傷つける衝動……どこにも行き場のない〈私〉に手を差し伸べてくれた男性、かつて想いを寄せてくれていた彼には、けれど、結婚式を控えた婚約者がいた――。
既婚者との恋愛小説、といってしまえば簡単ですが、ここで語られているのはそういう表層の関係性ではなく、誰しもなにかしらの理由で抱えている孤独と、自分とは当たり前に異なる「誰か」と、どのように向き合い、折り合い、前に進んでいくのか、何を引き受けていくのか、というようなことなんじゃないかと、私は思います。
〈「私が、いつの日か置き去りにされたあなたを、迎えに行くことはできますか」(略) 「俺は、頼られる専門でいいから。君が迎えに来いと言えば、いつだって行くし」〉
〈二人の関係の本当のところは分からないけど、あなたのほうが彼女に頼っている、そのことがすごく羨ましかったんだ。だけどそれを口にしたら、あまりにかっこ悪いでしょう。〉
彼が結婚してしまった後も、というよりはむしろその後から関係を始めてしまった〈私〉は、冷静に、客観的に見てみればとても愚かです。
けれど簡単に否定することはできない強さが、この小説には溢れています。
それはまさに、島本さんの静謐な筆致のたまもの。
胸がえぐられるような台詞やシーンがいくつもあり、マーカーでチェックをしたり(上記のセリフはまさしく!)読み返したい場面はいくつもしおりをつけ、その時々の気持ちで、めくったりしていました。
それからこの小説は、自分の一番読みやすいように、文字の大きさや書体の種類、背景色も変えられるので、自分の感情にあわせたシチュエーションで読めます。
電子書籍ならではですね。

自分の読みやすいように、フォントの種類や大きさ、背景までカスタマイズできるのがうれしいところ

軽くタップするだけで、しおり機能やカスタマイズのメニュー画面がでてきます

画面を長押しすると、気になるセリフをマーカーできたり、Web検索することも