人間味のある連続殺人犯の逃亡劇に日本全土は震えた

2011/10/20

復讐するは我にあり

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ジャンル:ビジネス・社会・経済 購入元:eBookJapan
著者名:佐木隆三 価格:540円

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法廷のルポルタージュで広く知られるノンフィクション作家、佐木隆三の小説。
佐木隆三はこの作品で直木賞を受賞した。

小説の舞台は昭和30年代の日本。女性や老人を含む5人の人間を殺した連続殺人犯、榎津巌を描いた作品である。榎津巌は延べ12万人に及ぶ警察の捜査網をかいくぐり、逃亡中、弁護士、大学教授になりすまし、78日間もの間逃亡したが、昭和39年に熊本で逮捕され、43歳で処刑された。作品は、この稀代の犯罪者の犯行の軌跡と人間像を事件関係者、被害者の視点で描かれている。

作中で印象的だったのが、キリスト教の扱いである。榎津巌は敬虔なカトリックのキリスト教徒で、作中で神父に告解している。神父は警察から逃走幇助罪に問われることを覚悟で、榎津巌の告解の内容を口にしなかった。そして榎津巌は逮捕された時、「大学教授や弁護士になってみたが、ニセ神父が一番難しい」と、神父の存在は特別だったと供述。キリスト教徒でありながら犯罪者として逃亡する榎津巌は内面に矛盾を抱いていたはずである。なぜならキリスト教徒は自殺を許さないからである。死にたくても死にきれず、逃げるしかない。その矛盾が私には人間性だと感じられてならない。

この作品は昭和38年に起こった殺人事件、西口彰事件を題材にしている。西口彰も大学教授や弁護士などを騙り、計5人を殺害。詐欺、窃盗により合計で80万円あまりを詐取した。熊本では弁護士を装って教戒師古川泰龍の家に押し入るが、当時11歳の少女が見抜き、通報することにより逮捕につながった。警察の上層部は「全国の警察は西口逮捕のために懸命な捜査を続けたが、結果的には全国12万人余の警察官の目は幼い一人の少女の目に及ばなかった」と語った。1966年に死刑判決が確定。1970年に死刑執行される。
そして西口彰も同じくカトリック教の家庭に生まれている。

この作品は、昭和54年、今村昌平監督、榎津巌役、緒形拳で映画化されている。
実は私もこの作品を知ったのは映画のおかげである。映画の方も映画史に残る素晴らしい作品である。


殺人犯榎津巌の全国指名手配書

捜査員に配られた重要凶悪殺人犯の足取り表である

足取り表のつづき

逮捕された時の罪状一覧

そして小説の最後は榎津巌の死刑死亡報告書で締めくくられている