気軽に手を出すと恐ろしい目に遭う「危険ドラッグ」の危険ぶり

公開日:2014/12/12

危険ドラッグはなぜ「危険」なのか~その恐ろしさと回復へのヒント~

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ジャンル: 購入元:BOOK☆WALKER
著者名:松本俊彦 価格:432円

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 ミステリーの源に、シャーロック・ホームズがある。1作目は『緋色の研究』だが、これは長編で、あまりヒットしなかったという。ところが2作目から短編に鞍替えしてみたら、たちまち大評判、名探偵の名は知らぬものとてない今のホームズが、めでたくでき上がった。

 おそらく19世紀の産業革命によって、みんな忙しくなり、パイプなんかくゆらせながら、暖炉の前でロッキングチェアよろしく、じっくりと、長い物語など読む余裕もなく、慌ただしさの合間にさっと読め、複雑な謎が快刀乱麻にほどけてくれる、短い探偵読み物に快感を感じたのだろう。

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 この趣向が本文庫「ミニッツ文庫」でも生かされている。平均、1分間に読める文字量を400字と仮定し、そこから全体の総文字量を逆に計算、55分で1冊読み終える本に仕立てた。これなら鎌倉から東京駅まで通勤の車内で、下手すれば2冊読めちまう。なにが鎌倉なのか、小津安二郎の映画から通勤風景を連想したのだが、とにもかくにも、早く読了できるのがそれほどよいことかどうか、私にはにわかに判断できないものの、読んでみて確かにそのペースで読めたのだけは、自信を持って宣言できるのであった。

 時々新書や、怪しいベストセラーなんかに目を通していると、同じ事柄を5回くらい繰り返し語る輩がいて、てんから閉口させられるのだが、それはそれで趣味が悪く、いっそバッサリ切ってしまい、頭の中もスッキリ、紙も節約になればいんじゃないか、そう思うから、内容さえ伴うなら55分文庫に賛成の肩を持たぬでもない。

 そこで肝心の中身だ。

 枝葉を取り去っていってしまうなら、「危険ドラッグ」のどうしようもない危なさをひたすら訴えている。

 この手の薬物には、アッパー系とダウナー系があるのは先刻ご承知だろうから、今さら説明する必要はあるまいが、このどちらもそのときの体調や摂取の経歴などによって、思わぬ激烈な作用を起こすことがあり、そのような状態に陥るなら、意識の朦朧とするはもちろん、暴れる、昏倒する、幻覚を見る、うわごとをわめく、万能感に襲われる、などの症状にやられちまう。近年多発するドラッグによる自動車事故はこうして起こるので、本人はてめえの責任でどうなろうがこっちは知らぬ顔を決め込むばかりで、それは確かに悪いことではあるが、放っておけばよく、だが問題は巻き込まれる他者、のんびりと歩いているのに、何の落ち度もなく、事故死というより、殺されたに近い悲劇となるではないか。

 私は30年来、合法ドラッグを服用している。鬱病というやつで、向精神薬という薬、最初は三環系の、しかしこれはあまり効かず、効いてもだいぶ時間がかかり、このごろはSSRIに変えてもらったところこれがてきめんに効く。ドラッグはよく効く。よく効くから怖いのだ。感想を述べるなら、私が薬を飲んでいるというより、薬が私を操っている感じすらする。

 危険ドラッグの購買層の大半は、ごく当たり前のサラリーマンや若者たち。当たり前というのは、グレてない人々を指すのだろう。グレてない人たちは、街で気軽に買えて、しかも数百円だものだから、軽い気持ちで摂取し始めると次第に禁断症状が現れる、いやこれは離脱症状というのか、怖さも怖いがなんともいやらしい物質である。

 一方、摘発だけでは収まらぬ事情もあって、危険ドラッグに指定された薬物は、すぐに少しだけ分子構造を変えた新しいドラッグに生まれかわり、それがいくらでも繰り返され、そのたびに毒性は強まり、いたちごっこの体をなすのだ。摘発と同時に、より充実した福祉保健センター等での受け皿も本書では強く主張されている。

 先ほど、知らぬ顔とは書いたものの、中毒の症状はつらく、立ち直りの道はさらにつらいらしい。危険ドラッグ、金輪際、手を出すべからず、というやつである。


危険ドラッグは次々と姿を変えてあらわれる

覚醒剤とよく似た構造のドラッグも

危険度ドラッグの使用者はその前に精神科に少し通っていた人が圧倒的に多い

生きづらさが使用のきっかけとなる場合が多いのでは

実際の症例も列挙する