「トリック・オア・トリート」でお菓子をあげる目的は? 日米で活躍する「オザケン」がハロウィーンの絵童話を出版

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公開日:2017/10/5

『アイスクリームが溶けてしまう前に (家族のハロウィーンのための連作) (福音館の単行本)』(小沢健二と日米恐怖学会/福音館書店)

 日本でもすっかり定着した感があるハロウィーンイベント。仮装を楽しんでみたり、「トリック・オア・トリート」と唱える子どもにお菓子をあげたりしているものの、「まあ、こんな感じのイベントなんでしょ?」と目的理解が曖昧なままで参加している人は少なくないのではないか。

 「オザケン」の愛称で親しまれるミュージシャン・小沢健二氏が「小沢健二と日米恐怖学会」の名で、ハロウィーンの絵童話を出版した。本書は氏ならではのユーモラスな語り口による子ども向けの物語仕立てになっているが、ハロウィーン文化の本場であるアメリカでの楽しまれ方やハロウィーンの目的や役割などもふんだんに紹介されており、大人が読んでも満足できる内容となっている。

 ハロウィーンは、どのような目的で行われるイベントなのか。

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 本書によると、ハロウィーンが今のような楽しいイベントになったのは、「世界恐慌」がきっかけ。日本での「嘘をついてもいい」エイプリル・フールのように、昔のハロウィーンは「本当にいたずらをしてもいい」日だった。

昔の子どもたちがしたいたずらは……

家の前に立っている郵便受けを、
野球のバットでボコボコに殴って回る。

家のドアに、
生卵をガシャガシャと投げつける。

放牧地の門を開けて、牛を逃しちゃう。
(なんか、昔っぽいね。)

などなど。

 それが、「百年くらい前、世界がめちゃくちゃになった」世界恐慌が起こると、ハロウィーンの様相が激変する。「大きな男の子たちは、電信柱をノコギリで切り倒したり、路上の車をひっくり返したり」した。他にも、人そっくりの人形を線路に寝かせて運転士を驚かせたり、干し草を積んだ荷車に火をつけて丘の上から転がし、火事を起こしたり。町の大人たちは、そんないたずらっ子たちを銃で撃ったりする。ハロウィーンは悲劇を量産するようになった。

 そこで大人が思いついたのが、ハロウィーンを楽しいイベントに変えること。

どう変えたかって?

ハロウィーンを「子どもがいたずらをしないでくれたら、大人がお菓子をあげる」というお祭りにしたんだ。

それ以来、子どもたちは「お菓子をくれないと、いたずらするぞ」って言う。大人たちは「いたずらしないでね」とお菓子をあげる。
電信柱をノコギリで、切り倒されないようにね。

 本書によると、「トリック・オア・トリート」は、アメリカ式発音では「チュリッカ・チュリー!」。ドアの前で声が聞こえたら、家の人はドアを開けて、その子が何の仮装をしているか、よく見て当ててあげるのがハロウィーンのルールであり楽しみ方だという。

 子どもがお菓子をもらって喜んで去っていく楽しいハロウィーンイベントがこれからも長く続くよう祈りたい。

文=ルートつつみ