ヨシタケシンスケの最新絵本!今度の絵本は、こねて、のばして……?

文芸・カルチャー

2017/11/10

『こねてのばして』(ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社)

 毎度毎度、予想の斜め上の発想力で見る者を虜にする、絵本作家・ヨシタケシンスケ。『りんごかもしれない』(ブロンズ新社)から始まり、最近では『ヨチヨチ父』(赤ちゃんとママ社)や『あるかしら書店』(ポプラ社)など、ジャンルを超えて人気を伸ばしている。また、独特のタッチとセンスで描かれるイラストも人気が高く、グッズも多数発売されている。

 先日10月19日、そんなヨシタケシンスケの最新刊『こねてのばして』(ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社)が刊行された。本書は、1人の男の子が、何やら白い生地のようなものをタイトル通りこねたりのばしたりする絵本。出てくるのは男の子と白い生地のみ――なのだが、それだけでは終わらないのがヨシタケシンスケ。男の子の行動がどんどんエスカレートしていく。「パン生地か何かかな」と思ったのも束の間、顔を押し付けたり、一緒に踊ったり、くるまったり……「あれ、これ何なんだろう? パン生地じゃなかったの?」と、だんだんこの白い生地の正体が気になってくる。そして最後には、思わず笑ってしまう展開も待ち受けている。

 もしこれがパン生地だったとして、自分の子どもが本書の男の子のような行動をとっていたら、普通の大人たちは「食べ物で遊んではいけません!」と注意するだろう。もちろんそれも間違ってはいない。食べ物は大事だ。しかし現実から切り離して絵本として見ると、率直な感想は「気持ちよさそう……」だった。もっちりふわふわしていて、おそらくひんやり冷たいであろうその生地の感触を想像すると、不思議と「これもありかも」と思えてくるのだ。それは、まだ経験の少ない子どもが持つ感想に似ているのかもしれない。そう考えると、子どもがたまに見せる不可解な行動にもきっと理由があるのだと、一体何を考えているのかと、むしろそれを一緒に楽しむこともできる気がする。

 ヨシタケシンスケの絵本を読んでいると、たまには「○○だから○○なハズ」という固定観念を捨てるべきなのかも、と常々思う。学習や経験は大事だし、役に立つことも多いが、経験ゆえに思考の幅を狭めてしまうのはもったいない。この絵本のように、もっと自由に「これで○○したらどうだろう」「○○したい」という気持ち、「○○かもしれない」という思いつきに従ってみると、本当はそこに新たな世界が広がっていたことに気づくかもしれない。この『こねてのばして』は、そんなことを改めて考えさせてくれる。常識に振り回される日常に疲れたら、この絵本を読んで、普段の思い込みを捨て去ってみてはいかがだろう? きっと、新しい何かが見えてくる。

文=月乃雫