子どもの国語力は「ねこ」が育てる!? スマホ世代の子ども向け、新発想の言葉あそび

出産・子育て

2017/11/16

■「0歳児からのスマホ」に漠然とした不安はありませんか?

画像出典:ミリー(https://millymilly.jp

 赤ちゃんのうちからこんなにスマホ慣れして、ホントに大丈夫?
――そんな漠然とした不安が、われわれ大人世代にはある。
実際、育児におけるスマホの存在感は年々高まっている。生後6か月~6歳児を対象とした2017年3月の調査(ベネッセ教育総合研究所「第2回乳幼児の親子のメディア活用調査」)によると、「ほとんど毎日」スマホに接するという割合は、21.2%にのぼる。4年前の前回調査の約2倍だというのだ。

 たしかに電車やバス、病院の待合室などの場で、ぐずる子どもを手っ取り早く黙らせてくれる便利なツールではある。
「気がつくと、自分で操作してYouTubeを見ています」(2才男の子)
「ひらがなを覚えたら、あっという間にパパとLINEできるようになった」(4才女の子)
 まさにデジタルネイティブ世代。でもそれがいいことなのか悪いことなのか、判断できないのがもどかしい。

■スマホ世代の子どもから、ごっそり抜け落ちそうな能力とは


「いい部分も確かにありますが、親が意識しなければ抜け落ちる能力があると思います」
 そう話すのは、金沢星稜大学人間科学部こども学科の芥川元喜准教授だ。長くお茶の水女子大学附属小学校で国語科の教鞭をとってきた芥川准教授は「いまの子どもたちの語彙は、豊かさを失っている」と感じているという。

「ネットの世界は『わかりやすい言葉』で構成される傾向があります。LINEやツイッターで使われる言葉は非常に短く、簡単な表現を重視します」
 さらに芥川准教授は、「子どもたちにとって、『答え』までが近すぎることも問題」と話す。「乳幼児期からスマートフォンに接している子どもにとって、『答え』にアクセスすることは容易なことです。でもそのせいで、試行錯誤する体験が抜け落ちてしまいます。いまの情報化社会では、ネット検索するとすぐに『答え』らしきものに出会えます。しかし、それが本当の『答え』なのか分からないまま、『答え』なんだと自己完結してしまう。なかなか『答え』に出会えないからこそ楽しい! そんな探求心が芽生えないのではと危惧しています」

■3年後「学習指導要領」もいよいよ変わる!

 子どもの「言語能力」のさらなる育成を進める動きは、平成32年度から本格施行される「小学校 新学習指導要領」からもうかがうことができる。「言語能力は、すべての学力を支える要となるものであり、国語科だけでなく、すべての教科の中で伸ばさなくてはならないと強調されているのです」(芥川准教授)

 それは小中学校に限ったことではない。平成30年度より実施される新しい「幼稚園教育要領」は、幼児期が終わるまでに育ってほしい姿の一つとして「言葉による伝え合い」をあげている。そのための方法として推奨されているのが「絵本」だ。

■はてしなく自由に、言葉で遊ぶための「ねことば」とは!?

 それにはどんな絵本が向いているのだろう。芥川准教授は、『ねことばじてん』(主婦の友社)という絵本を薦めてくれた。


 ページをめくると、少々驚かされる。すべてのページに、さまざまな「ねこ」のついた言葉が並ぶのだ。その言葉が、フツーではない。
「ねこうさく」というねこは、「ねこ」と「工作」が合体している。「ねこんらん」は、ねこと混乱。「ねこレステロール」は……、そう「コレステロール」だ。

 なぜコレステロールなんだ? なぜ合体するんだ? まさに「ねこんらん」状態だが、湧き上がる疑問に絵本はいっさい答えないまま、言葉は続き…なんと、264もの「ねことば」が掲載されている。
斬新だ。そして自由だ。はてしなく自由だ。
「そう、それが魅力です」と芥川准教授は言う。

■「答え」がない絵本から広がる発想


「子どもは『ねことばってなんだろう?』と本を手に取り、『次にどんな言葉が出るんだろう』と次々ページをめくり、気に入った言葉で立ち止まるんです。たとえば『ねこころここにあらず』ってなんだ?って。『心ここにあらず』の意味をお家の方に教えてもらって、『へえ。ねこってちょっとボンヤリしてるしなあ』なんて想像したりするでしょう。『ねことば』自体に、言葉の意味はないけれど、『ねことば』に『かくれている言葉』には確かな『意味』があります。その意味を楽しみながら親子で探ってみてください」


 芥川准教授には、ほかにも興味深い読み方をいくつか教えてもらった。「『ねこしあん』は『ねこ』と『こしあん』。ほかにも、『あれ? ねこ+しあん(思案)もあるよ!』なんて、隠れた新しい『ねことば』を見つけたら、語彙はどんどん膨らみます。またこの絵本には、『おなじ よみかたで ちがう いみの ねことば』のページもありますね。音声言語は同じでも、意味は異なる言葉に出会う。これも大切な語彙力を養う手立てと考えます」


「中にはやや難しい言葉も含まれています。この分からない言葉に出会うことも大切です。理解できる容易な言葉ばかりよりも少し難しい、『あれ? これ、どういう意味?』という言葉がある方が、自分で考えたり、お家の方に聞いてみたりして、考える場面が必然的に出てきます。こうした場面では、自然とお家の方との対話も生まれるでしょう。絵本を読んで、親子で対話する。子どもの語彙力を豊かにする大切な場になるはずです」


 最後に、この絵本には「答え」がないところがすばらしい!と、芥川准教授は言う。「言葉の意味(答え)は絵本のどこにも書いていません。意味を示さないことが、子どもと『答え』を遠ざけます。だからこそ、子どもは自分で想像し、楽しく考えるのです。ここが、この絵本の醍醐味です。親子でさらにいろんな『ねことば』を生み出してほしいですね」
 スマホで検索しても「ねことば」は作れない。「答え」を探すスマホの世界と、なんだかわからないけれど楽しい「ねことば」の世界。両方を子どもの心に置いておけたらいいのかもしれない。

取材・文=神 素子