「すみません……甘くみてました」「後半は電車で読まない方がいいですよ」。書店員からも映像化にして欲しいと大反響! ただの泣ける小説ではないその理由は?

小説・エッセイ

2017/12/9

『余命10年』(小坂流加/文芸社)

 『余命10年』(小坂流加/文芸社)は、20歳の時に不治の病となり、「余命10年」という現実を突きつけられた茉莉(まつり)という女性が主人公の恋愛小説だ。

 ある時彼女は、同窓会で出会った和人(かずと)と恋に落ちてしまう。自分を「普通のOL」と偽り、余命のことを隠したまま愛する人と過ごす幸福で残酷な日々。

「10年」という命の期限。その逃れられない現実がいよいよ迫り来る時、茉莉はある決断をする――。

 本作は、発売6ヶ月で売り上げ20万部を突破した衝撃作で、来年1月で創刊1周年を迎える文庫レーベル「文芸社文庫NEO」で最大のヒットとなっている。発売直後からSNS上では数々の感想が寄せられている。また、静岡書店大賞実行委員会が主催する「第六回静岡書店大賞」の「映像化したい文庫」部門にも『余命10年』が選ばれている。この小説のモデルとなった女性は、著者自身なのではないかというウワサがあることも含め、大きな反響を呼び、映像化を望む声も多い。

 本のスペシャリストである書店員さんからも、続々と感想が寄せられている。

すみません……、甘くみてました。これ、本当に良いです。すごくオシたい一冊です。
ただの余命恋愛話じゃなくて、一人の力強くもまっすぐで美しい人間の生き様を描いた、感動ストーリーでした……。もちろん、恋愛の部分もとても面白く、きゅんきゅんするんですが……。主人公の茉莉の考え方や選んだ言葉の一つひとつが、とても素敵で女性だけれど格好良くて、こんな生き方考え方で私は生きているだろうかと、改めて考えさせられ、そして、勇気づけられました。最後、読後には小坂流加の2作目、3作目も読んでみたかったと、心底思いました。これは、もっと多くの方に読んでいただける作品だと改めて思いました。
――明文堂書店富山新庄経堂店 中根舞さん

10年というのは長いのか短いのか。自分が20代の10年間を改めて考えると、あっという間だったように感じる。余命が10年しかないという感覚は自分にはわからないし、かわいそうとも悲しいとも思わなかったが、この本を読んで心が動かされた。私事だが最近亡くなった私の祖母がどんな気持ちで寝ていたのか、当たり前に出来ていたことが出来なくなっていく感覚はどうだったのか。本当に色々な事を読んだ後に考えさせられた。
――ジュンク堂書店奈良店 中村潔さん

「後半は電車で読まない方がいいですよ」
ほんとでした……。恋愛小説と帯にありますが、一人の女性の生きた証でした。
――ジュンク堂書店近鉄あべのハルカス店 大江佐知子さん

余命10年。タイトルからして“泣かせてやる感”が凄い。よくある難病恋愛ものだろうな、と思いながら読み進めた。そして気付く。ただ泣けるだけじゃない。ただ切ないだけじゃない。ただ悲しいだけじゃないと。(中略)私は茉莉と同じように余命10年と宣言されたら、茉莉と同じように自分の生き方を必死に探して生きられるだろうか。人は誰しもゴールは同じ。そのゴールに向けて今、自分ができる事は何だろうか。正解は無くとも、自分の生き方で精一杯生きることが大切だと改めて感じました。
――明文堂書店小松ツリーズ 北田さゆりさん

 本作の編集が終わった直後、著者の小坂流加さんの病状は悪化し、今年2017年の2月に亡くなられた。

 書店員さんのコメントにもあった通り、著者の2冊目、3冊目が読めないことを私もすごく残念に思う。そして改めて、生きている意味を見つめ直すことができた気がする。もし映像化したら、涙で画面が観られなくなりそうだけれど……。

文=雨野裾