「きたない子育て」が子どもを丈夫にする?! 「しっかりと手を洗いなさい」…そのしつけのリスクとは?

出産・子育て

2017/12/12

『「きたない子育て」はいいことだらけ!―丈夫で賢い子どもを育てる腸内細菌教室』(ブレット・フィンレー、マリー=クレア・アリエッタ:著、熊谷玲美:訳/プレジデント社)

 子どもが外から帰ってきたら「しっかりと手を洗いなさい」。食事の前にも「しっかりと手を洗いなさい」。社会的に、手を洗うことの是非に疑問の余地はなさそうな雰囲気だ。

『「きたない子育て」はいいことだらけ!―丈夫で賢い子どもを育てる腸内細菌教室』(ブレット・フィンレー、マリー=クレア・アリエッタ:著、熊谷玲美:訳/プレジデント社)のタイトルにドキッとするかもしれない。本書によると、清潔にしすぎることで、かえって病気になりやすい体をつくってしまう可能性がある。

 本書は、確かにこの100年ほどを見ると人が一生のうちに感染症にかかる回数は減少し、かかったとしても重症化する可能性は低くなったが、それは医学の進歩があったからだという。一方で、先進国ではぜんそくやアレルギーの発症率は増加している。本書は、先進国でぜんそくにかかる子どもの割合について、過去30年で3倍に増加しているデータを示している。かたや開発途上国での同割合はあまり変わっていないことから、ぜんそくやアレルギーなどを「先進国病」と呼ぶ。

 なぜ、医療が進歩しているにもかかわらず、先進国病の勢いは増しているのだろうか。本書は、この背景に清潔へのこだわりすぎがあると述べる。

現代のライフスタイルでは、子どもの生活環境が人類の歴史上かつてないほどに清潔になっていることが、わたしたちのマイクロバイオータと、生涯にわたる健康に、実は大きな打撃を与えていることもわかってきた。

 マイクロバイオータとは、ヒトに棲息する微生物叢(びせいぶつそう=微生物のむらがり)のことで、細菌やウイルス、菌、原生動物などの顕微鏡レベルの生物からなっており、皮膚や口腔、鼻の穴、目、肺、尿管、消化管など、外界と接している部位のほぼすべてに存在する。

 微生物はヒトの体に数千種が棲息するが、このうち病気の原因になると判明しているのは100種ほど。微生物のほとんどが問題を起こさないどころか、実際は大きな恩恵をもたらしてくれていることが研究で明らかにされつつあるという。

 つまり、先進国の子どもたちは、清潔にしすぎるがゆえに、先進国病にかかりやすくなっていると主張しているのだ。

 では、例えば冒頭で触れた手洗いについて、子どもにどうしつければいいのだろうか。本書の手洗いに関する内容をまとめてみる。

・前提として、手洗いは間違いなく、感染症にかかったりそれを広げてしまったりするのを防ぐのに一番いい衛生習慣
・朝から晩まで手を洗っていなくていい
・手洗いのタイミングは、食事の前、トイレの後、病気の人に接した後、など
・手洗いの必要がないタイミングは、外遊びの後、外から家に入ってきた後、他の子どもと遊んだ後(ただし、いずれも「手洗いのタイミング」に該当する場合は手洗いをする)

 微生物との接触が感染症リスクに関連している場合と、関連していない場合の区別をすることが重要なのだ。

 とはいえ、微生物は肉眼で確認できない。「今は感染症リスクがある」「今はない」と都度判断するのは難しいといえる。上記の内容は、あくまで考え方の参考とするに留めたほうがよいだろう。

 ただ、清潔すぎる環境は体を弱くする可能性もある、という考え方をすこしだけ受け入れることで、子どものぜんそくなどの症状が軽減する希望はあるのかもしれない。

 今は感染症の流行期なので、外から帰ったらしっかり手洗いを。

文=ルートつつみ