恋した相手は――憎むべき敵!? 戦場から始まるボーイ・ミーツ・ガール『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』

ライトノベル

2017/12/20

キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』(細音 啓:著、猫鍋 蒼:イラスト/KADOKAWA)

 細音 啓による『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』(猫鍋 蒼:イラスト/KADOKAWA)第3巻が、2017年12月20日に電子書籍が配信された。

 本作は、敵対する国家に所属する少年と少女が戦場で相対し、心を通わせていくというボーイ・ミーツ・ガールだ。科学技術が高度に発達した「帝国」の兵士イスカ、魔女の国と恐れられる「ネビュリス皇庁(おうちょう)」の王女アリスリーゼ(アリス)は、それぞれ国を背負う最強の騎士と神秘の魔女として激突しながらも、お互いに人間として惹かれ合っていく。
 以前第1巻を紹介したが、改めて本作の見どころを3つの観点からまとめてみた。

 1つ目のポイントは、イスカとアリスの関係性だ。あるときは敵としてド派手なバトルを繰り広げ、あるときは初々しい恋人同士のようにいちゃつき、そしてまたあるときは目的のために共闘するという複雑な絡み合いを見せる。お互いを男女として意識し合っているのに、様々な「枷」が邪魔をしてなかなか進展しない関係はなんとももどかしく、それでいて愛おしい。アリスに至っては戦闘の決着をつけるという口実で、イスカと出会った中立都市に足繁く通うようになり、いつしかイスカに会うことが目的になっていくという乙女っぷりも見せてくれる。

 2つ目は、イスカとアリスを取り巻く帝国と皇庁の動きだ。2人が想いを募らせていくと同時に、両国の緊張関係も高まっていく。その中でイスカは一介の兵士として消費され、アリスは女王の後継者として戦場でも家督争いに巻き込まれてしまう。大国の謀略に翻弄される2人は何度もすれ違いを繰り返す。あくまでも戦いを宿命づけられていると言わんばかりに。しかし、だからこそ2人のロマンスが盛り上がるのである。

 3つ目は、魅力的なバイプレーヤーたちだ。なかでもイスカの所属する部隊の隊長ミスミスとアリスの側近である燐の存在感は大きい。ミスミスは22歳ながら子どもに間違われてしまうほど幼く見える女性で、部隊メンバーからもいじられてばかり。頼りないところもあるが、それでも本人はデキるお姉さんだと思い込んでいるところがかわいらしい。一方、燐はアリスのためなら冷酷な判断も下せるクールな少女。中立地帯だろうと構わずイスカの命を狙いにくる。この2人がイスカとアリスの関係に大きな影を落とすことになる。

 いよいよ発売された第3巻では、これら3つのポイントがふんだんに描かれる。アリスに心を許したイスカが燐に隙を突かれ、皇庁側に拉致されてしまう。これが双方を巻き込んだ大事件へと発展。皇庁領に潜入する帝国軍、イスカを奪われたミスミスの怒り、そして一時的に同じ部屋で密着して過ごすことになるイスカとアリスと、とにかく盛りだくさん。お互いをより深く理解していくイスカとアリスの裏側で、イスカ奪還作戦はどのように進行するのか。秘密任務の緊張感とラッキースケベありの二人の新生活(?)という硬軟織り交ぜた展開に翻弄されること請け合いだ。

文=岩倉大輔